今回のLearnTernでは「フロー体験・フロー状態」を解説します。
フロー体験に入れるようになれば、圧倒的に人生を楽しめるはず。
フロー体験を構成する8要素とフロー体験に至る4ポイントを紹介します。
フロー体験(状態)とは?
フロー体験とは、心理的エネルギーを1つの目標に向けて集中して、行動できている状態のことです。
スポーツなどでいわれる「ゾーン」と同じです。
フロー体験は心理学者のM・チクセントイハイによって提唱され、著書『フロー体験 喜びの現象学』にまとめられました。
いまや「幸福」や「創造性」に関するポジティブ心理学の代表格ともいえる概念です。
しかしフローは一部の人間だけに許された才能のようなもの。
と、思っていませんか?
もちろん訓練は必要ですし、適性があることも明らかになっています。
でも、フローはデザインできるのです。
そのために必要なフローの8要素とフロー状態に入るための4ポイント。
今回はそんなことをお伝えします。
フロー体験(状態)の3つの効果
まずはフロー体験の効果・メリットを見てみましょう。
① 高いパフォーマンスの発揮
フロー状態に入った人は、尋常でない集中力により、その人の持つ最大限の力を発揮します。
仕事やスポーツであれば高い業績を、勉強であれば効率のよい習得を期待できます。
② 圧倒的な“楽しさ”の獲得
フローは“楽しさ”を生み出します。
自分にとってちょうどいい課題に対して、自分の全力をもって取り組んでいるからです。
ゲームに熱中してしまう状態に似ているでしょう。
③ 自己の“成長”と“発見”
フローは自分の限界を引き上げます。
結果、新たな自分を「発見」し、「成長」することができるのです。
フロー体験(状態)を構成する8要素
チクセントミハイは、チェスのプレイヤーやクライマー、音楽家、バスケット選手、外科医などのフロー体験を観察していく過程で、フロー状態に共通する8つの要素を明らかにしました。
① 達成できる期待のある課題
まずフロー体験では、達成できる課題に取り組んでいることが前提になります。
簡単ではない、けれど不可能ではないその人にあった課題に取り組まなければフロー状態には入れないのです。
② 行動への集中
フロー状態の人は“今やっている行動”に集中します。
私たちは普段、物事に注意するためのリソースを分散して使っています。
自分の安全確保や明日の予定、緊急のタスク、朝あった嫌なことなど、多様な事柄にリソースを割いて、その余りで目の前の仕事や勉強に集中するのです。
しかしフロー状態では目の前の行動以外の一切にリソースを割きません。
圧倒的な集中状態なのです。
③ 明確な目標
フロー体験を得る人たちが一貫して持っていたもの。
それは、その行動に対する明確な目標でした。
どうなったらクリアなのか、そのために何をしなければならないのか。
フローのためには明確な目標設定が必要なのです。
④ 直接的で即時的なフィードバック
フロー体験の条件として、明確な目標と共に重要なのが、「フィードバック」です。
細かい行動1つ1つに対して、直接・即時のフィードバックがあります。
脚をこう動かしたら速くなった、駒をこう動かしたらこうなる、この解法を用いればこの式が出てくる、こう出れば相手はこう動く
フィードバックに対して修正を繰り返すからこそ、限界まで力を引き出せるのです。
⑤ 不快なこと、気になることを忘れる
注意のリソースをその行動のみに割くと言いました。
それは結果的に、日々の不快なこと不安なことを忘れることにつながります。
フロー状態は無意味なストレスを消し去った状態でもあるのです。
⑥ 恐れを払い、成功を観る、高い統制の感覚
フローに入った人は、失敗の不安に負けず、ただ自らの成功を信じます。
その環境・自己の行動を高レベルで統制している感覚です。
それにより普段ならできないような行動・思考を実現するのです。
⑦ 自意識の消失による自己超越
フロー体験中は、自意識が消失します。
厳密には「その行為から切り離された自己」の存在を無視するのです。
目の前の行為と自分が一体化する感覚です。
結果、自己の境界が曖昧になり、自己を超越した自己を発見・成長することができます。
⑧ 時間間隔の変容
フロー体験は、時間の感覚を変えてしまいます。
2つの変化があります。
まず、フロー体験が終わった後、振り返ってみるといつもより時間が短く感じます。
しかし、フロー体験の最中は時間が引き延ばされている感覚、それも通常ではありえないような時間の感覚になります。
注意リソースの投入の仕方次第で、主観的な時間間隔は変容するのです。
なんとなくフローのイメージは掴めたでしょうか?
次はお待たせ、フロー状態への入り方を紹介します。
フロー体験(状態)の入り方|4ポイント
POINT1|目標の設定とフィードバックの監視
第1に、その行為の目標を明確にします。
これは「なぜその行為をするのか」ではなく、「どのようになったらクリアなのか」を設定します。
チクセントミハイの観察対象、チェスのプレイヤーやロッククライマーなどだと目標はわかりやすいですね。
またフィードバックを監視・取得できるような状況を整えましょう。
スポーツやチェスなどの競技でフローが起こりやすいのは、この「目標とフィードバック」が整いやすい環境だからかもしれませんね。
POINT2|活動への没入-能力と課題のバランスをとる-
フロー体験に入るために最も重要なのはこの「活動への没入」です。
とはいっても難しいですね。
実は1つ注意すべきポイントがあります。
それは「能力と挑戦する課題のバランス」です。
挑戦する課題に対して能力が高すぎると、「退屈」に感じてしまいます。
逆に課題に対して能力が低すぎると、「不安」や「絶望」を感じることでしょう。
フローに入りやすい「フローチャンネル」はこの「退屈」と「不安」の間に存在しています。
活動への没入のためにはこのフローチャンネルを見つけ出しましょう。
POINT3|現在起こっていることへの注意集中
注意リソースの使い方のポイントです。
目の前のこと、設定された目標に関係することだけにリソースを使います。
その他のことに割り振るリソースは一切ありません。
行為のシステムを構築し、それを維持するために絶え間なくリソースを注ぎ続けるのです。
フロー状態に入れば、意識しなくてもできます。
入りやすくするためには「内的秩序化」が必要です。
心の中に秩序を持ち、リソースを意のままに操れる状態にするのです。
詳しく話し出すと長くなってしまうので、キーワードだけ伝えましょう。
「マインドフルネス」と「日記を書く(日記でなくてもいいが過去の体系化・秩序化)」です。
第1歩としては、「注意にはリソースがあるんだ」という感覚を掴みましょう。
POINT4|直接的に体験を楽しむ
フロー体験は自己目的的です。
つまり、行為の先にある報酬ではなく、行為の達成自体が目的であるということです。
外発的動機づけではなく、内発的動機づけになります。
自分が何に楽しさを感じるのか、強い興味を抱くのか、何のために生きるのか
そういったことを考え、自分という存在の秩序を考えることです。
ちなみに私の場合、
情報を編集・デザインすること
に対して興味と楽しさを感じるとわかりました。
実際それが明確になった後、フロー体験に入るポイントを意識したとき、記事執筆のスピードやプレゼン作成の精度などが上がったのを感じます。
フロー体験(状態)で喜びを得る
- フロー体験とは、心理的エネルギーを1つの目標に向けて集中して、行動できている状態
- フロー体験には8つの構成要素がある
- 4つのポイントを意識することでフロー体験に入りやすくなる
フロー体験はあなたに圧倒的なパフォーマンスと楽しさを与えます。
フローのために必要な目標・フィードバック・リソースの統制・能力と挑戦のバランスなどを意識して、フローの頻度を増やしていきましょう。
フローをデザインすることができれば、仕事や勉強の精度が上がり、また楽しくなります。
フロー体験後の疲労感も気持ちいいものです。
Let’s フロー・ライフ。
好きな本や漫画、ゲームを出してきて、注意リソースが集中している感覚を理解しよう