今回のLearnTernでは「自己効力感」を解説します。
自己効力感をシンプルに言えば「できる感」です。
後半では「自己効力感の5要因」を紹介します。この5要因をうまくコントロールできれば、モチベーションの維持・向上スキルが手に入ります。
*ちょっと長いですが、細かい部分はスキップしても大丈夫です。
自己効力感-人の成長と挑戦を支えるもの
自己効力感は、「ある課題・行動を自分が達成・遂行できるか」に対する自信のことです。
「私は逆上がりができる!」
「英語でコミュニケーションができる!」
このような認識が自己効力感にあたります。
自己効力感を高めることは、モチベーションの向上やチャレンジ精神の醸成、打たれ強い精神の構築につながります。
今回は、自己効力感を決定する5つの要因と自己効力感を高める5つのテクニックを学んで、自分のモチベーションを高めてみましょう。
また、自己効力感は「期待理論」のメンバーです。
「期待理論」については以下の記事を参考にしてください。
自己効力感とは
自己効力感の定義
ちょと難しめな定義です。
自己効力感とは、「自分が、ある結果を生み出すために必要なある行動を上手く遂行できるか、という可能性に対する認知」のことを指します。カナダの心理学者アルバート・バンデューラ(Bandura)によって提唱されました。
英語でSelf Efficacyというので、そのままセルフ・エフィカシーと読む場合も多いです。
もう少しシンプルにすれば、
自己効力感 = 「ある課題・行動を自分が達成・遂行できるか」に対する自信
です。バッサリ言うと「できる感」になります。
自己効力感の高さはいくつかの行動に影響を与えます。
・行動を継続できるか
・困難に直面した時にそれでも耐えられるか
・行動を開始できるか
・高いパフォーマンスを発揮できるか
自己効力感が高ければ、これらの行動にポジティブな影響が出ます。
モチベーションも上がりますね。
自己効力感と「自尊心や有能感」との違い
(*細かい部分なのでスキップOKです)
自己効力感はよく自尊心や有能感と混同されます。
自己効力感がある「課題」に対しての認知であるのに対し、自尊心や有能感は「より一般的な」自己に対する感情です。
しかしながら、自己効力感にも「特定の課題を超えた一般的な自己効力感」というものも想定されています。
そこで本記事では自己効力感は「判断」、自尊心や有能感は「感情」であると定義しておきましょう。
具体例でイメージする自己効力感
バスケットボールのフリースローを例にして、自己効力感を具体的にイメージしてみましょう。
まず、過去のフリースローの成功体験が多ければ、自己効力感は高くなります。
逆に失敗体験が多いと、自己効力感は低くなるわけです。
また、自分の前の人が成功していれば自分の自己効力感も高まり、失敗が続いていれば「自分も失敗するのでは…」と考え、低くなってしまう傾向が知られています。
応援や激励によって高まることがあれば、緊張や体調不良によって低くなることもあります。
<自己効力感がUPする>
・成功体験
・前の人が成功
・応援や激励
<自己効力感がDOWNする>
・失敗体験
・前の人が失敗
・緊張や体調不良
自己効力感のイメージ、わいてきたでしょうか?
自己効力感を高めるメリット
このあたりで自己効力感を高めるメリットも整理しておきましょう。
自己効力感のメリット① チャレンジ精神を向上させる
自己効力感は、ポジティブに行動する自分をつくります。
結果、難しい課題に対しても積極的に行動するようになります。
行動開始のスピードが上がるのもポイントです。
自己効力感のメリット② 打たれ強くなる
自己効力感は精神的な打たれ強さにもつながります。
自分の行動と能力を真摯に見つめることで、ただ落ち込むのではなく、次の一手を考えるようになるのです。
自己効力感のメリット③ 成長に対するモチベーションが上がる
自己効力感は、自分の能力・行動・結果を見つめ、ポジティブな行動を加速させます。
その結果、より自分の能力を向上させたというモチベーションにつながっていくのです。
自己効力感の3種類
自己効力感には3つの種類があるとされています。
(*細かい部分なのでスキップOKです)
1〉自己統制的自己効力感
自分の行動を制御することに関する自己効力感で、最も基本的な種類です。
・失敗から立ち直る
・前人未踏のプロジェクトに自ら立候補する
・初めての仕事に対してポジティブに臨む
などの行動は自己統制的自己効力感にあてはまります。
2〉社会的自己効力感
人間関係に関する自己効力感です。
・良い人間関係をつくる
・チーム内での自分の価値を認める
・相手の気持ちを理解する
などの行動に対してはたらく自己効力感です。
3〉学業的自己効力感
学習に関しての自己効力感です。
・決めたスケジュールをきっちりと守って勉強する
・身の回りの様々なことから学ぼうとする
・新しく、難しい概念に積極的に取り組む
などの行動に影響を与えます。
自己効力感の5要因から学ぶメカニズム
バンデューラは自己効力感に関わる要因を4つ、挙げました。後に提案されたもう1つを加えて、ここでは「自己効力感の5要因」とします。
自己効力感を高めるためには、まず自己効力感が何によって決定されるのかを考える必要があるでしょう。
ここではそのメカニズムについて迫っていきます。
自己効力感の要因① 達成経験
1つめの要因は、「達成経験」です。
自分自身が何かを達成・成功した経験のことで、自己効力感を決める最も重要な要因です。
「どのような行動をとったことで、どのような結果が得られ、それはどのような評価だったのか」に対する判断から現在の自分の行動能力に対する認知を形成します。
上手く行った経験が得られれば、やる気も上がりますよね。
自己効力感の要因② 代理経験
2つ目の要因は、「代理経験」です。
これは達成経験とは違い、他者が達成・成功した経験、その観察にあたります。
達成経験と同じような認知プロセスですが、「誰が」という主体要素が加わります。
他の人が上手く行っていると「自分もできるかも」という気になったりしますね。
自己効力感の要因③ 言語的説得
3つめの要因は、「言語的説得」です。
自分にその行動を遂行する能力があることを言語的に説明することを指します。
言語的に表現する主体は自分でも他人でも構いません。
ポジティブであれネガティブであれ、言語的に表現されたものは自己効力感に影響してしまうのです。
使う言葉・触れる言葉で、思ったより影響を受けるので気をつけましょう。
自己効力感の要因④ 生理的情緒的高揚
4つ目の要因は、「生理的情緒的効用」です。
これは、体調や気持ちなどが自己効力感に影響を与えるというものです。
落ち着いていたり、爽やかな気持ちや行動に対する高揚感があれば良い影響が期待できます。
逆に、寝不足や緊張、不安感などが出てしまっていては、悪影響につながるでしょう。
負のループに陥りやす要因なので、普段から注意したほうがいいです。
自己効力感の要因⑤ 想像的体験
最後の5つ目は、「想像的体験」です。
自分や他者の成功(失敗)をイメージすることが要因になります。
精彩にイメージすればするほど大きな影響が出ることが予想されます。
以上、5つの要因のゲージがプラスになったりマイナスになったりすることで、自己効力感は決定されるのです。
つまり、自己効力感を高める方法は、この5要因のゲージをいかにプラス方向に向けるか、ということに焦点を当てることになります。
自効力感を高める5つの方法
今回は5要因に合わせて5つの方法を考えてみました。
① 小さな目標の達成を繰り返す(達成経験をプラスに)
自己効力感を高める最も確実かつ効果的な方法がこれです。
自己効力感が下がってしまう原因としてよく挙がるのは「不適切な目標設定」です。
目標未達成→自己効力感DOWN→パフォーマンスDOWN→目標未達成……と、最悪のループが始まります。
高すぎる目標設定、複雑すぎる目標設定は学習者の敵です。
そんな状態を避けるために、まずは確実に達成できる目標を多くこなし、豊富な達成経験をつくりましょう。
「スモールステップの原理」などが活用できるかもしれません。
② 成功している人の本や動画、また知り合いから話を聞く(代理経験をプラスに)
人が成功している姿を観察することでモチベーションや「自分もやってやる(できる)」感は上がります。
このとき注意なのは、結果だけではなくどのような行動の末にその成果を得たのかを確認することです。
自己効力感は「行動→結果」に対する認知なのです。
また、遠くのすごい人より身近なすごい人を観察したほうが効果は高くなります。
③ ネガティブな言葉をポジティブな言い方に変える(言語的説得をプラスに)
ついネガティブ発言してしまう人、いますよね。
いたずらに謙虚になる必要はないのです。
言霊というのは意外と馬鹿にできません。
言語にしてしまうと、私たちの精神や身体そして認知は影響を受けてしまうのです。
どうせならプラスの影響を受けたいですよね。
発言するだけならタダです。ポジティブな発言に慣れましょう。
④ 健康的な身体を保ち、マインドフルネスを取り入れる(生理的情緒的高揚をプラスに)
筋肉信者の人たちは筋肉があれば何でもできると言います。
実際、認知能力にポジティブな影響があるという研究結果があったり。
べつにマッチョになれというわけではありませんが、健康的な肉体は私たちの認知にいい影響を与えてくれます。
また、少し前に流行ったマインドフルネス、瞑想によって健全な精神をつくることも有効です。
毎日5分だけでも心を集中するよう取り組んでみてください。
トレーニング(ストレッチ)と瞑想を1週間も行えば、自己効力感に驚異的な変化が表れているはずです。
⑤ 起きた後と寝る前に、成功した自分をイメージ(想像的体験をプラスに)
恒常的に成功した自分をイメージできるよう習慣づけておきましょう。
イメージするときは「行動→結果」のプロセスを詳細に描けるようになっておくといいです。
あと、眠る前にイメージすると良い夢みれそうですよね(注:主観です、何のエビデンスもありません)。
自己効力感を高めて、充実したチャレンジを
- 自己効力感は、「ある課題・行動を自分が達成・遂行できるか」に対する自信
- 自己効力感はチャレンジ精神や打たれ強さ、モチベーションに影響を与える
- 自己効力感の要因は達成経験・代理経験・言語的説得・生理的情緒的高揚・想像的体験の5つ
- 自己効力感を高めるためには、5要因をそれぞれプラス方向に持っていく
自己効力感。
それはモチベーションの源泉であり、私たちの人生を変えてくれるものかもしれません。
自己効力感の仕組みを理解することで、モチベーションもコントロール可能です。
自己効力感を使いこなして、チャレンジングでポジティブな毎日を過ごしてみませんか?
5つのテクニックから一つ選んで実践してみよう