今回のLearnTernでは「ARCSモデル」を紹介します。
ARCSモデルは、学習意欲系の理論の中でも、全体を包括したような理論です。
まだ学習意欲系を学んでいない人はまずここから。
すでに学んでいる人も、知識を体系化してみましょう。
動機づけ理論の代表、ARCSモデル
今までLearnTernでも「学習意欲」「動機づけ」に関する理論をいろいろと紹介してきました(いくつ読んでくれたでしょうか?)。
それぞれ役立つこと間違いなしのエース級の理論たち。
とはいえ、全部を活用することは難しかったりします。
今回紹介する「ARCSモデル」は多くの動機づけ系理論を包括したモデルです。
ARCSモデルに照らし合わせながら各理論を活用すれば、あなたの実践もよりレベルアップするかもしれません。
ARCSモデルとは
ARCSモデルは、J. M. Keller(1984)が提唱した、学習意欲に関連する概念をまとめたモデルです。
Kellerはそれまでの学習意欲に関する研究を調査し、人の意欲をドライブする4つの領域をまとめ上げました。
「注意(Attention)」「関連性(Relevance)」「自信(Confidence)」「満足感(Satisfaction)」の4領域です。
これらに沿って、学習意欲を向上させる方法をデザインしていくことが出来ます。
実はARCSモデルはかなり実践的に用いられているモデルです。
企業の研修などでインストラクショナルデザイン(ID)の一環としてよく使われています。
ARCSモデルは研修や教材をデザインするにあたって、非常に有用なんですね。
けれどLearnTernは学習者視点のサイトですので「自分の学習にどうARCSモデルを導入するか」という観点で読んでいってください。後半で方法を紹介します(というより各記事へのリンク)。
ARCSモデルの4領域、A・R・C・S
ではARCSモデルの4領域について紹介していきます。
ARCSモデルは「A・R・C」+「S」の構造で理解したほうがわかりやすいです。
学習者の「注意(A)」を惹き、「関連性(R)」を示唆し、「自信(C)」を強化することで学習に取り組んでもらい、「満足感(S)」を得ることで学習を継続する
「A・R・C」は学習のスターター、「S」はブースターみたいなもの(?)です。
ARCSモデル① 注意(Attention)
ARCSモデルの1つ目は「注意」です。
好奇心や興味の刺激・維持を目指します。
まったく興味のないことを学習するのは大変です。
でも全然興味なかったはずのことに、コンテンツ次第では興味を持ったりします。
学習者に興味を持たせ、のめり込ませるのがARCSモデルにおける「注意」です。
なお「注意の理論」に出てくる「注意」とは少し意味がズレるので分けて考えておくのがベターです。
ARCSモデル② 関連性(Relevance)
ARCSモデルの2つ目は「関連性」です。
関連性というのは「自分(学習者)と学習対象の関連性」のことですね。
それを学ぶことが自分にとってどういう意味・意義があるのか。
スキルアップになる、友達に成績で勝つ、恋人に褒められる、知的好奇心が満たされる。
とにかく「自分との関連性」がない学習へのモチベーションは長続きしませんし、燃え上がることもないでしょう。
関連性を見つけ、強化できるようにデザインするのが「関連性」の役割です。
ARCSモデル③ 自信(Confidence)
ARCSモデルの3つ目は「自信」です。
自分がその内容を学習(達成)できるという期待感の話ですね。
興味あるし、自分がそれを学ぶ意味もある。
けれどやる気が出ないのはどういう時か。
できる自信がまったくない。もしくは自信過剰で学ぶ必要がないと思っている時です。
あまりにチャレンジング過ぎて成功の見通しがまったくないことは、普通やりたくありません。
また「自分はすでに十分にそれについて知っている」と思っている人も学習しません。事実かどうかに関わらず、です。
学習者が適切な自信を持てるようなデザインをするのが「自信」の役割になります。
ARCSモデル④ 満足感(Satisfaction)
ARCSモデルの4つ目は「満足感」です。
冒頭で述べたとおり、学習の継続を促すための領域になります。
学習に取り組んだあと、何の達成感もなければモチベーションがどんどん下がっていきます。そういうものです。
学習前のデザインはしっかりやっているのに、学習後のデザインが適当なケースはけっこうありますね。
学習に適切な満足感を用意し、学習継続を促すのが「満足感」の役割です。
ARCSモデルの実践編
ARCSモデルの4領域は覚えましたか?
研修や授業を設計する人は、この4領域の質問を繰り返しながら、学習者がモチベーション高く取り組めるようなコースをデザインするのです。
LearnTernでは、学習者目線でどのようにARCSモデルを活用するか、考えみましょう。
基本的にはこれまでの記事にヒントがあります。
ARCSモデル実践編① Attentionの実践 知的好奇心
「注意」は興味や好奇心の刺激についてでした。
自分では、自分の知的好奇心はコントロール出来ないと思っていますか?
そんなことないです。知的好奇心についてよく知れば、それを刺激することだってできるのです。ぜひ下の記事で学んでみてください。実践的なアプローチも紹介しています。
あと単純に、自分が面白いと思うコンテンツを探すのも重要です。
今はマンガやアニメでもいろいろ学べます。
ARCSモデル実践編② Relevanceの実践 学習動機の二要因モデル
自分の学習動機を分析するのに役立つのは「学習動機の二要因モデル」ですね。
すべてのパターンについて考えてみると、意外な理由が見つかるかもしれませんよ。
環境を整えてみることも大事です。
「競い合うライバル」「一緒に学ぶライバル」「目標を宣言する」などして、学習動機をつくってみましょう。
ARCSモデル実践編③ Confidenceの実践 期待×価値理論
「自信」に関する理論といえば「期待理論」です。
まずは「期待理論」を学んで対策を考えてみましょう。
また、「満足感」でも紹介する「スモールステップの原理」も活用できます。
学習内容を小さく分けて、簡単なところからやっていきましょう。
難しいものは分けるに限ります。
「自信過剰」対策はシンプル。
「ダニングクルーガー効果」の記事にて紹介しているので、そちらを御覧ください。
ARCSモデル実践編④ Satisfactionの実践 スモールステップ
「満足感」は細かく達成を積み重ねることで得られます。
そのために使えるのが「スモールステップの原理」です。
また「フィードバック」設計も大事です。
数字で見られるようにしたり、他人の意見を貰えるようにしたり。
過去の自分と今の自分の変化を見られるようにしておくのがポイントです。
ARCSモデルで学習意欲を向上させる
ARCSモデルはこれまで学んだ学習意欲系理論を整理するのにも使えます。
「イマイチ学習意欲が上がらんなー」という時はARCSモデルに照らし合わせて、どの領域に問題があるのかを探してみてください。
問題箇所が見つかれば対策を考えることもできるでしょう。
ARCSモデルの活用については提唱者であるKellerが書いた『学習意欲をデザインする-ARCSモデルによるインストラクショナルデザイン-』が良い感じなのでもしよければお読みください。
学習意欲をデザインする: ARCSモデルによるインストラクショナルデザイン
ARCSモデルで、自分の学習を分析してみよう