【学習動機の二要因モデル】あなたはどのタイプ?何のために学習するのか知ろう

【学習動機の二要因モデル】あなたはどのタイプ?何のために学習するのか知ろう

何のために学習するのか?

「あなたは何のために学習しますか?」

学習する理由、学習動機は人によってそれぞれです。
認知心理学、教育心理学の世界でもこの学習動機に関する研究は盛んに行われています。

その中の1つ「学習動機の二要因モデル」は学習動機を6つのパターンに分類しました。

この学習動機のパターンを知ることで、適切な動機づけができるようになります。
あなたやあなたの生徒はどのパターンでしょうか?

さっそく見ていきましょう。

学習動機の二要因モデルとは

学習動機の二要因モデルは、市川伸一氏によって提唱されたモデルです。
このモデルでは、学習動機を「学習内容の重要性」「学習の功利性(賞罰の直接性)」の2軸で分類し、全部で6パターンの志向を導き出しました。

学習動機の2要因モデル
*(市川,1995)を参考に筆者作成

学習動機の志向(学習内容の重要性, 学習の功利性)

① 充実志向(大, 小)

「学習自体が楽しい」
勉強すること自体が楽しいのでやっているタイプの人たちです。
高い知的好奇心を持っている、フロー状態に入りやすいなどの特徴を持っていることが多いです。

② 訓練志向(大, 中)

「頭を鍛えるため」
自己鍛錬のために学習を続ける人たちです。
いわゆる秀才に多いタイプかもしれません。

③ 実用志向(大, 大)

「仕事や生活に活かす」
実務などに直接役立つ学習を行う人たちです。
社会人の方なら、恐らく誰もがこの動機を持ったことがあるでしょう。

④ 関係志向(小, 小)

「他者につられて」
特に強い動機もなく、他の人がやっているから自分も学習するという人達です。
日本の学校には多いパターンで、つまり周りに学習者がいないと学習を辞めてしまいがちです。

⑤ 自尊志向(小, 中)

「プライドや競争心から」
周りに負けたくない、という思いから学習を頑張る人たちです。
環境次第では強い学習者になるでしょう。

⑥ 報酬志向(小, 大)

「報酬を得る手段として」
外発的報酬のために学習に取り組む人たちです。
「学習した結果得られるかもしれない利益」ではなく「学習自体に対して設定される報酬」になります。

以上が学習動機の二要因モデルです。

常に1つのパターンに当てはまるとは限りません。
学校では⑤自尊志向だが、好きな歴史については①充実志向、バイト先では③実用志向で、受験に対しては②訓練志向である。
みたいなケースもあり得ます。

あなたやあなたの生徒の学習動機を分析してみましょう。

学習動機の二要因モデルは、学習内容の重要性・学習の功利性の2軸で6パターンに学習動機を分類する

正しい動機づけのために学習動機のタイプを知ろう

さて、ここからが本題です。
学習動機のパターンを知ることに、いったい何の意味があるのでしょうか?

それは、「正しい動機づけを行う」ためです。

動機づけについては、モチベーションを上げること、といった理解で十分です。

「問題集のこのページまでやったらケーキ」
「明日のテストではライバルと勝負になる」
「これは仕事に間違いなく役立つことだ」

など、動機づけにはたくさんの種類があります。
しかしここで注意が必要なのが、動機づけの中には逆効果になってしまうものもある、ということです。

動機づけには大きく分けて「外発的動機づけ」「内発的動機づけ」の2種類があります。
外発的動機づけは、金銭報酬や他者との競争によるもの、
内発的動機づけは、有用性や興味に由来する自分自身で生み出すものです。

有名なものだと、「アンダーマイニング効果」というものがあります。

これは内発的な動機で動いている生徒に対して外発的な動機づけを行ってしまうことで、内発的動機づけを阻害してしまうという効果です。

A君、最初は楽しいから頑張っていた数学の勉強(内発的動機づけ)。
ある時から先生が頑張った分に対してジュースをおごってくれるようになります(外発的動機づけ)。
しかし学年が上がって担当の先生が代わり、ジュースの制度はなくなってしまいました。
この時、A君の動機づけは外発的なものに移っており、数学に対する学習意欲は落ちてしまいます。

このような動機づけの失敗を避けるために、学習者の学習意欲パターンを知っておくことが大切なのです。

学習動機パターンごとに適切な動機づけとは

表の上段、①~③には内発的動機づけが有効です。
逆に表の下段、④~⑥には外発的動機づけが有効となっています。

私なりにそれぞれのパターンについての代表的な動機づけを考えてみました。

① 充実志向の学習者に対する動機づけ

  • 興味のありそうな本を買う。
  • 学習に費やせる時間を増やす。

② 訓練志向の学習者に対する動機づけ

  • 能力が上がった様子を数値化する。
  • 段階的に難しくなる問題を用意する。

③ 実用志向の学習者に対する動機づけ

  • 有用性を提示(認識)する。
  • 具体的な仕事・生活における活用事例を提示(認識)する。

④ 関係志向の学習者に対する動機づけ

  • 学習意欲の高い人と一緒に学習する(させる)。
  • 学習動画を見る(見せる)。

⑤ 自尊志向の学習者に対する動機づけ

  • 学習者に順位をつける。
  • 自分(その生徒)より少し上の人を目標にする。

⑥ 報酬志向の学習者に対する動機づけ

  • 経済的報酬を用意する。
  • 精神的報酬を用意する。

学習動機を知って、動機づけの失敗を防ごう

①充実志向の人に、順位表を意識させてもモチベーションが下がるだけ。
⑥報酬志向の人に、学習による副次効果(「ロジカルシンキングができるようになるよ」)を提示しても意味はありません。

実は今、自分(生徒)に対して行っている動機づけは、効果がない、むしろ逆効果かもしれません。

まずは学習動機のパターンを分析しましょう。

ちなみに、外発的動機づけから内発的動機づけまでの変化を分析した「自己決定理論」なんてものもあります。
興味ある方は是非!

 

自分や生徒、周りの人の学習動機を「学習動機の二要因モデル」に従って分析してみよう


 

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