【概念転移の3ルート】学習したことを「使う」ための方法論

【概念転移の3ルート】学習したことを「使う」ための方法論

今回のLearnTernでは「転移の3ルート」を紹介します。
以前にも紹介した学習の転移。今回は『授業デザインの最前線2』を参考に、転移の3ルートをまとめました。

・学習したことを上手く使えない……
・生徒が学んだことをちゃんと転移できるようにしたい

そんな学習者や先生方はサラッと読んでみてください。

概念転移はむずかしい

そもそも「転移」とは何か?

簡単に言えば、あるシーンで学習したことを別のシーンで使って成果を出すことです。
学習成果の指標になるので、学習科学の世界では重要なテーマとして研究されています。

転移にはいろいろな種類があります。

・数学の授業で学んだことを、定期テストで使う
・数学の授業で学んだことを、コスト計算をするのに使う
・Rubyで学んだことを、Pythonを学ぶときにつかう(プログラミング言語の基本)
・Rubyで学んだことを、デザインを学ぶ時に使う(新しい技術の学び方)

転移は成功すればするほど、学習のコスパが上がります。

しかし一つ問題が。
それが「知識の領域固有性」です。

知識というのは、それを学習した特定の文脈や状況に強く結びついた状態で獲得されます。地縛霊のようにそのシーンと結びついた状態の知識は、他のシーンでは使いにくいのです。

この領域固有性のせいで、知識の転移は起こりにくくなっています。

・表面的な共通点がある
・応用できることを予め教えられている

このような条件がないかぎり、転移は起こりにくいというのが通説です。
転移は難しいのです。

概念転移の構造を理解する

今回は、そんな難しい転移の構造を理解していこうと思います。
まずは以下の図を見てください。

概念転移の3ルート

転移には3つのルートがあります。

・「事例に基づく推論」(ルート①)
・「抽象化を媒介する転移」(ルート②)
・「構造生成アプローチ」(ルート③)

各ルートについては次の章で詳しく書いていきます。

どのルートを通るかは、転移元のシーン(ベース)と転移先のシーン(ターゲット)の関係で決まります。数学の類題のような同型問題は「近い転移」、表面上は全く関係なさそうな非類似問題は「遠い転移」です。

転移がしやすければルート①、簡単には転移できない場合はルート②、直接は転移できなさそうな場合がルート③になります。

3つのルートを分ける軸は「抽象化」です。

ルート①は、ベースとなる知識をオリジナルに近い具体度で転移させます。
ルート②は、ベース知識を「解法や公式」に抽象化させてから転移させます。
ルート③は、より本質的な構造にまで抽象化させてからの転移です。

転移を成功させられるかどうかは「抽象化」にかかっています。

概念転移の3ルート

ここからは3つのルートについて詳しく見ていきましょう。

転移ルート① 事例に基づく推論

もっとも具体度の高いカタチでの転移です。
その性質上、ベースとターゲットの関係はほぼ「1:1」になります。

ほぼ同じ形の問題に対して、そのまま同じ解法を転移させるカタチですね。

ルート①の障害となるのは、シンプルにベースとなる知識が足りないこと。

そのため、ルート①を通る可能性を上げるためにできることは「ベースを増やす(多くの問題を知る)」ことです。

加えるならば、類似点に敏感になるよう意識するのもありでしょう。

転移ルート② 抽象化を媒介した転移

ベース知識を抽象化して解法などを転移させるルートです。
ベースとターゲットの関係は「n:1」になります。

ベース知識をそのまま適用できないようなシーンに出会った時に通るルートです。
そのまま適用できないので、抽象化しなければなりません。

ルート②を通るために心がけたいのは「ベースの比較・集約・構造化」です。

個々の経験を比較することで「相違点」を、集約することで「類似点」を、これらを通して知識を構造的にしていきます。

実はこのようなプロセスを経験するのに”数学”という教科は非常に優れているのですが、イマイチ実感できていない人が多いですね。
たぶん学校で学ぶ中で、多くの人の生涯を通して役立ってくるのは数学だけです。

転移ルート③ 構造生成アプローチ

最後のルートは非常に通るのが難しい「構造生成アプローチ」です。
ルート②で使った解法レベルの知識を、さらに複数組み合わせ、構造化して、その本質を抽出した上で転移させます。

表面上はまったく関わりのなさそうなシーンにも転移させることができるのが強みです。

イメージを話します。
「2種類の優秀な人」の話です。

どちらも博士号をとっているような優秀な人物。同じような専門性を持っています。

両者とも、専門領域については、初めて出会った問題に対しても精度の高い答えを返してくれます。

しかし一人は、専門領域の外では答えられません。
対してもう一人は、高度な思考によって、専門領域と同じ様に高い精度の答えを返してくれます。

二人の違いはルート③を通れているかどうか
後者は、自分の専門領域の知識から、より本質的な構造を抽出しているので他分野についても高度な思考が可能なのです。

ルート③を通るためには「自分で知識を生成する」能力を高める必要があります。

手始めとして、学んだ内容を自分オリジナルでアウトプットする経験を積んでいきましょう。いきなり高度なことはできません。まずは目の前の知識を自分なりに説明・表現してみてください。

(後者の「優秀な人」に出会ったら、その人の表現力に注目してみてください。言語化力・図解力に優れているはずです。)

概念転移レベルを上げていこう

今回は「概念転移の3ルート」を紹介しました。

まずはルート①を通れるように、知識を増やす。
次にルート②を通れるように、知識を構造化する。
さらにルート③を通れるように、知識を表現する。

教える人も、これらのポイントを意識してガイドしてみてください。
「事例効果」について調べてみるのもありです。

転移を増やして、学習のコスパを最大化しましょう。

転移について学んだことを表現(ツイートとか)してみよう

「#LearnTern」とか付けてくれたら、見に行きます。

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