自己決定理論とは? 3つの軸と5段階のプロセスを理解して、内発的動機づけを促そう

自己決定理論とは? 3つの軸と5段階のプロセスを理解して、内発的動機づけを促そう

外発的動機づけから内発的動機づけへ

動機づけには2つの種類「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」があります。
内発的動機づけは自分でやる気になること、外発的動機づけは自分の外にあるものによってやる気になることです。

基本的に「外発的動機づけ」よりも「内発的動機づけ」の方が高いパフォーマンスや学習効果を得られるでしょう。
先生から出された宿題やご褒美のために頑張った学習よりも、自分で興味を持ち、やりがいも感じている学習の方が高い効果が得られることはイメージできると思います。

一方で、動機づけとして導入しやすいのは「外発的動機づけ」です。
自分や他人にやりがいを感じさせるより、褒美や罰で行動を促すほうが簡単でしょう。

ここまでは基本的な動機づけのお話です。

外発的動機づけと内発的動機づけを二分して話してきました。
が、この2つがつながっているものだとしたらどうでしょう。

まずは簡単な「外発的動機づけ」からはじめ、だんだんと「内発的動機づけ」を促していくことができるでしょう。

このような展開を支える理論が今回のテーマ「自己決定理論」です。

自己決定理論は、人間の基本的な3つの欲求を挙げ、それらをベースに外発的動機づけから内発的動機づけまでを5段階に分けました。
今回はこの自己決定理論について学んでいきましょう。

自己決定理論とは?

自己決定理論は、DeciとRyanによって、内発的動機づけに関する多く研究を統合して生まれた理論です。

自己決定理論を一言で言うとするならば、「内発的動機づけへと至るまでの道筋を探求する理論」になるでしょうか。

自己決定理論のベースは「3つの基本欲求」「内発的動機づけと外発的動機づけの連続性」です。

二分して考えられることが多かった内発的動機づけと外発的動機づけですが、3つの基本欲求を基礎として考えることで、2種類の動機づけを連続して捉えることができるようになります。

順番に見ていきましょう。

自己決定理論と3つの基本欲求

自己決定理論の根幹を支えるのは3つの基本欲求、すなわち「有能さ」「関係性」「自律性」です。

「有能さ」は自分の能力とその証明に対する欲求。
「関係性」は周囲との関係に対する欲求。
「自律性」は自己の行動を自分自身で決めることに対する欲求。

特に「自律性」の欲求が重要だとされています。

これら3つの欲求が満たされていくことで、人は内発的動機づけや心理的適応を促進させるのです。

例えば、最初はやらされていた書道教室。
しかし少しずつ上手になっていったり(有能さ)、
友人と一緒に学んだり(関係性)、
好きな字や題材を描くことが許されたり(自律性)していくうちに、「やりがい」を感じていきます。

自己決定理論とアンダーマイニング効果

自己決定理論で「アンダーマイニング効果」を説明することもできます。
アンダーマイニング効果とは、内発的動機づけの状態の人に外発的動機づけを施してしまうことで、内発的動機づけが阻害されるとする理論です。

これは外的な報酬によって「自律性」が侵害されているのです。結果、内発的動機づけが低下することになります。

逆に言えば、「自律性」を損なわず、「有能さ」や「関係性」を高める外的報酬(例えば褒め言葉)を与えることができれば、アンダーマイニング効果は発生しないのです。

自己決定理論を用いることで、アンダーマイニング効果に関する重要な示唆も得られたわけです。

自己決定理論の5段階ー外発的から内発的へ

自己決定理論では外発的動機づけから内発的動機づけまで5段階に分けて説明しています。
基本的には「自律性」が高まっていくに応じて段階が進むことになります。

自己決定理論の5段階

① 外的調整

第一段階「外的調整」は完全なる外発的動機づけの状態です。
「言われたからやる」以上でも以下でもない段階になります。

外的な報酬・罰によって意欲が規定される状態です。

② 取り入れ

第二段回「取り入れ」では、義務感を得て行動します。
自分がやらなくてはいけないという意識、ノルマ意識が芽生え、支持されなくても行動できる状態です。

報酬や罰だけでなく、自身の評価に対するプライドや他者との関係性を考慮する段階となります。

③ 同一化

第三段階「同一化」の状態では、その行動を当然、自分のものであると認識します。
その行動の必要性も十分に認識しており、その必要性によって行動が規定される段階といえるでしょう。

④ 統合

第四段階「統合」では、自身の目的や欲求とその行動の価値が一致してきます。
内発的動機づけに近い状態です。

ここまでくると相当に積極的な行動が期待できます。

⑤ 内発的動機づけ

第5段階でとうとう「内発的動機づけ」に至ります。
その行動自体にやりがいを感じ、楽しんで行動する段階です。

結果的に高いパフォーマンス、学習効果が期待できます。

以上が自己決定理論によって規定される内発的動機づけまでの5段階です。

自己決定理論と学習意欲

最後に学習意欲の観点から自己決定理論を見てみましょう。

まず私からの提言です。

「すべての学習において ⑤ 内発的動機づけ の段階を目指さなくても良い」と思います。

学習者として歩む長い人生。すべての学習対象に興味を持ち楽しんで学習に打ち込めるのは素敵なことですが、現実問題そう上手くいかないかもでしょう。

たしかに最も効果が高いのは内発的動機づけの状態ですが、必ずしもその状態でなければ必要な学習成果が得られないわけではないのです。必要性、という意味では同一化のレベルでも十分と言えるでしょう。

この提言を踏まえながら、「自己決定理論を利用した学習意欲の高め方」を紹介しておきます。

① 自己決定理論「3つの欲求」を高める

3つの欲求「自律性」「有能さ」「関係性」を上手く高めていくのが基本です。

「有能さ」についてはそれを実感できるようなテストやランキング表、ほか学習に対してポイントや自己評価をつけたりすると良いでしょう。

「関係性」は他者を学習に利用することで高まります。一緒に学習するのもいいでしょう。また「他人に教える」ことで「有能さ」も同時に高められるかもしれません。

「自律性」については選択がキーワードになってきます。
体系的な学習をしていく時、最初はテキストに沿って進めていくかもしれません。

ここでポイントです。
ある程度基礎的な知識や技術が習得できてきたら、次は自分で何を学ぶか決めていってみましょう。
生徒に対する教育でも「自分で何をどのように学ぶか決める権利を与える」というのは重要です。
さながらゲームのキャラクターの育成計画を練るように、自分の学習をコントロールしているという感覚を得ましょう。

②「なぜ学習するのか」を問いかけ続ける

加えて、「なぜ自分がそれを学習するのか」を問いかけ続けることです。
最初のうちは、報酬や義務感、必要性が答えになると思います。
しかし段階が進むと、自分の人生の目的や価値観、そもそも楽しいから、といった答えが浮かんでくるようになります。

問いかけることによって、これらの変化を認識することが大切です。

自己決定理論を理解して、動機づけをコントロールしよう

今回は自己決定理論について学びました。
「3つの欲求」と「5つの段階」覚えたでしょうか?

特に最後に紹介した、「自己決定理論を利用した学習意欲の高め方」については実践してみてほしいです。
どうせなら、意味や楽しさを持って学習したいですよね。

 

 

「3つの欲求」と「5つの段階」を声に出して思い出してみよう


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