どうも、当サイトLearnTern(ランタン)を運営しているAkiです。
前回のStoryでは、「”学び方”を学ぶ意味」について紹介してみました。
今回は「学習のイメージ」についてお話したいと思います。
学習にどんなイメージを持っているかで、学習意欲も効率も変わってくると思うんですよね。
私の場合は「ひも」です。
いちおう認知心理学的な背景もあったりするので、あとで紹介します。
なんでイメージの話をするの?
そもそもなぜ「学習のイメージ」について話すのか、についてもう少し解像度を上げておきましょう。
ちょっと「イメージ」とは別の概念なんですが、似たような概念で「メンタルモデル」というものがあります。
簡単に説明すると、「これはこういうものだろう」という頭の中のモデルのことです。
砂場はこんなもので、幼稚園はこんなもので、起業はこんなもので、数学はこんなもの、みたいな感じです。
いま、頭の中にイメージ浮かんでますよね? たぶんそれがメンタルモデルです。
(メンタルモデルという用語には他にもいくつか意味があったりしますが、今回はこの意味をおさえてください)
メンタルモデルは認知科学の世界でよく扱われているものですが、ここからは僕の主張も入ります。
メンタルモデルって、限界を決めるものでもあるんですよね。
陸上の世界で「1マイル4分の壁」という話があります。
かつて、1マイルを4分を切って走るのはムリだと考えられていました。エベレスト登頂や南極点到達よりも難しいとも言われていたそうです。
しかし、1954年5月6日、イギリスでロジャー・バニスターが「3分59秒4」という記録を打ち立てました。
彼は科学的なトレーニングなどを取り入れ、見事に壁を乗り越えたのです。
驚くのはここから。
なんとそこから約1年の間に23人もの選手が4分を切ったのです。
それまで不可能だと思われていた記録が次々と打ち立てられ、破られていったのです。
私たちは知らないうちに限界を決めてしまっています。
「これはこういうもの(だからソレはムリ)」というメンタルモデルに能力が規制されているからです。
今回、学習のイメージを問い直す理由の1つがこれです。
学習にもっと期待してほしい。
理由はもう1つあります。
メンタルモデルは精密であればあるほど良いです。
チェスの初心者がナイトの動き方について持つメンタルモデルと、グランドマスターが持つメンタルモデル。
グランドマスターのソレのほうが、遥かに精密です。
そして精密なメンタルモデルは高いパフォーマンスにつながるのです。
ゆえに、学習についてもレベルの高いメンタルモデルを持ってほしい。
より鮮やかに学習というものをイメージしてほしい。
そんな思いが根底にあります。
学習にどんなイメージ持ってる?
というわけで、あなたの学習のイメージはどんなものですか?
学習って何のためにするもの?
学習によって何が変わるの?
学習のプロセスは?
学習の限界は?
学習って楽しい? つまらない?
学習のイメージ、思い描きましたか?
では、私のイメージを伝えていきましょう。
注意ですが、これはあくまで私のイメージですので、真似してほしいわけではありません。
「学習ってそんな風にも捉えられるんだ」と思ってもらえれば幸いです。
私のイメージ「ひも」
冒頭で触れたとおり、私のイメージには「ひも」が深く関係しておきます。
私たちは頭もしくは心の中に「ひものかたまり」を持っています。
それはつまり、知識とか経験とか言われるものです。
たまに認知科学の世界でつぶやかれるのが次の一文。
「学習者は白紙ではない」
白紙(タブラ・ラサ)と聞くと、イギリス経験論のジョン・ロックを想起するでしょうか?
生まれたばかりの人間は何も書き込まれていない白紙だ(だから先天的な観念なんかない)という主張ですね。
ここではタブラ・ラサがどうかは関係ありません。
私たちは生まれてから今日まで、様々な経験を得ています。
その経験によって、人はそれぞれ変わるわけです。持っている知識も経験も違うのです。
ゆえに、学習者は白紙ではない。既存の知識の上に、新しい知識を学習していくのだ。
そういうことです。
この「既存の知識」が私の言う「ひものかたまり」ですね。
かたまりから「ひも」を伸ばして、新しい「ひも」と結び目をつくるプロセス。
「知識の豊富化」と呼ばれるものです。
「ひも」を一度解きほぐして、新たな「ひも」とともに結び直す。
「知識の再構造化」と呼ばれるプロセスです。
私たちはそもそも「ひものかたまり」を持っていて、それを新しい情報を用いながら変化させていくのが「学習」というプロセスである。
ザックリ説明してみました。
ちなみにこのイメージは、認知心理学的には「認知構造」と呼ばれる概念に相当します。
理論的な解説はまた今度で。
ここまでイメージ共有できているでしょうか?
「わかりにくいからもっと教えろや!」という人はTwitterの方でご連絡ください。
このイメージを持っていると、「精緻化」などがよくわかります。
「精緻化」は、対象を他の知識やイメージに結びつけることで記憶しやすくなる、という記憶の仕組みであり、方略です。
(LearnTernでは記憶術についてもいろいろ解説しているので興味がある人は見てみてください)
これを「ひも」で解釈するなら、かたまりから「ひも」を何本も伸ばして絡め取っているイメージになります。
逆にです。
かたまりから一切「ひも」を伸ばさず対象を記憶しようとしても、それはムリなのです。
こんな感じで、私は多くの理論を「ひも」を通して解釈します。
そうすることで、より実践に近づけることができるわけです。
学習とは世界との関わり方を変えること
ここまでは学習の「プロセス」に焦点を当てた話でした。
ここからが「学習ってどんなもの? 何の意味があるの?」に移っていきます。
まず前提として。
私たちが住むこの世界に対しては「ひも」を通してしか関わることが出来ません。
世界への関わり方は究極的には3つに収束すると私は思っていて、それは「観察(環境から情報を得る)」「思考(情報を加工する)」「行動(環境に対して影響を与える)」の3つです。
ひもを通して世界を観察します。
ひもを使って、思考します。
ひもを用いて行動し、世界に影響を与えます。
したがって。
学習とは「世界との関わり方」を変化させるプロセスなのです。
もしかしたらそれは、人生を変えてしまうような変化になるかもしれません。
今抱えている問題を解決できるような変化かもしれません。
デザインを学ぶことで毎日通っている道はその姿を変えます。
プログラミングを学ぶことで、問題に対するアプローチが変わります。
メタ認知を学ぶことで、自分の思考は変化するでしょう。
学習とは「世界との関わり方」を変化させるプロセスであり、それは私たちの持つ可能性を表現するものなのです。
あなたの学習のイメージは?
最後ちょっと抽象的な話になりましたが、どうでしたか?
メッセージは伝わったでしょうか?
学習のイメージ、メンタルモデルを再構築してみてください。
きっとあなたの学習の助けになります。
次回はまた違った視点から、学習について考えてみたいと思います。
「学習と武器と力」、乞うご期待!
ではまた。