学んだ(教えた)のにできない・実践しないのはなぜ?
「学んだはずなのに実践できていない……」(学習者)
「これ、教えたはずなのにな……」(教育者)
学んだテクニックや知識を実践できていない、もしくは部下や生徒に教えたはずなのに実践されていない、というシチュエーションはよくあると思います。
そんな時、あなたはどのようにしていますか?
自分は「できないやつ」だと、落ち込んでしまうでしょうか?
部下や生徒に対してイラついてしまうでしょうか?
(原因帰属理論の記事も参考になるかもしれません)
実は、テクニックや知識の実践には「3つの障害」があるとされています。
「媒介欠如」「産出欠如」「利用欠如」の3つです。
これらの違いと、それぞれへの対策を知ることで、上のようなシチュエーションに上手く対応できるようになるかもしれません。
一流の学習者・教育者を目指すのならぜひ知っておいてほしい「3つの欠如」。
今回は「学習方略利用の発達段階」について学習していきます。
学習方略利用の発達段階とは|媒介欠如・産出欠如・利用欠如
人がどのような段階を経て方略(メソッド、テクニック)を実践できるようになるのかについて考えた研究分野が「学習方略利用の発達段階」です。
この理論では、3つの段階が想定されています。
媒介欠如・産出欠如・利用欠如の3つです。
この圧倒的意味のわかりにくさから、初見の人は引いてしまうかもしれません。
しかし意味は意外とシンプルなので安心して読みすすめてください。
媒介欠如とは
最初の段階である媒介欠如は、「効果的な方略(メソッドやテクニック)を持っていない」段階です。
つまり、そもそも「知らない」段階になります。
-2次方程式の解の公式を使うタイミングでも、そもそも知らないから解けない
-EXCELの関数機能について知らず、効率の悪い作業をつづけてしまう
これらは媒介欠如の状態であるとされます。
産出欠如とは
2つ目の段階である産出欠如は、「方略を知っているのに、利用しない」段階です。
すでに習ったテクニックであるにも関わらず実践できない状態を指します。
-最初に図を描くといいと教わったのに、描かない
-営業先へのフォローについて教わったのに、実行できない
教師や上司などが生徒や部下に対して不満を覚えるシチュエーションの1つではないでしょうか?
産出欠如の状態では、そのテクニックや知識を使うタイミングがわからなかったり、そのテクニックを使う必要性を十分に感じていなかったりする場合があります。
利用欠如とは
3つめの段階である利用欠如は、「方略を使おうとはするが、上手く使えず成果が出ていない」段階です。
-加法定理が使えそうな問題だが、上手く当てはめることができない
-報告書にグラフや図を使おうとしているが、効果的な表現になっていない
産出欠如に比べると、実践しようとしている分よさげですが、問題解決に結びつかないテクニックに価値はありません。きっちりと対策する必要があるでしょう。
ここまで3つの段階を示してきました。
媒介欠如・産出欠如・利用欠如を区別できるようになったら次の【対策編】に進みましょう。
3つの欠如に対する「対策」
では3つの欠如【対策編】です。
この対策を身に着け、実践できれば、一流の学習者・教育者に一歩近づくことでしょう。
媒介欠如への対策
媒介欠如は「まだ知らない」段階。
この段階への対策はいたってシンプルです。
「方略を明示的に教示する」
そのテクニックや知識を教える(学ぶ)のです。
キーワードがあるとすれば、「明示的に」の部分でしょうか。
教える側としては教えたつもりになっていても、学習者は覚えていないかもしれません。
日本史の教師が授業中に話した小話を、生徒は重要なものとして覚えたりしないものです。(自然に覚えることはあっても)
産出欠如への対策
媒介欠如対策は多くの人ができていることでしょう。
一方で、意外とできていないのがこの産出欠如対策。
「方略の価値を認識させる」
学習者が自発的にその方略を使うためには、当然その方略は使うメリットがあるものだと認識していなければなりません。
したがって、「方略の価値」を認識させる必要があるのです。
この対策をせず、方略の重要性に対する認識のズレがある状態で怒っていても仕方がないのです。
方法としては、
方略の価値 = 有効性 / コスト
の方程式から①有効性の認識(その方略の便利さ、重要さ)を高めること、②コスト(その方略を使うにあたってのハードル)を下げることの2種類があります。
具体的な方法としては、
①→ 事例の紹介、成功体験の蓄積、外発的動機づけ
②→ ステップの細分化、繰り返しのトレーニング、失敗のフォロー
などが考えられます。
利用欠如への対策
利用欠如「使おうとするけど上手く使えない」段階は、知識不足や熟練度不足が原因です。
方略がどのような場面で何故有効なのか、正しく使いこなすためにどのような手順を踏めば良いのか。
理論的理解から実践的理解へ進むための方法を探しましょう。
基本的には繰り返しのトレーニング・実践とフィードバックによって達成できると思います。
以上、3つの障害への対策を紹介してきました。
実際の具体的対策はそれぞれのシチュエーションによって異なるとは思いますが、ここで紹介した焦点をベースに考案していってください。
対策を学んで、実践率を高めよう
実践できていない状態が、媒介欠如・産出欠如・利用欠如の3段階に分けられることを知っているだけで、学習者への態度や行動を変えることができます。
学習者側も、自分がどの段階にいるのかメタ認知しておくことが学習効果の最大化につながるでしょう。
多くの人は産出欠如にぶち当たっていると思います。
きっちりと対策していきましょう。
媒介欠如・産出欠如・利用欠如について説明して、それぞれへの対策を挙げてみよう