今回のLearnTernでは「場所法」について解説します。
場所に結びつけることで記憶を強化するテクニック、知りたくありませんか?
場所法の原理とやり方を紹介してきます。
ぜひ御覧ください。
場所法とは
人は、記憶力というものに憧れを抱きます。
今はITの発達で記憶力のポジションは少し落ちていますが、記憶力こそが知の象徴だった時代もあります。
そのため、人々は多くの記憶術を開発してきました。
今回紹介するのは、そんな数多の記憶術の中でも王道ともいえる「場所法」。
場所法は、場所と覚えたいものを結びつけて覚える記憶術です。
なぜ場所法は有効なのか-
場所法は誰でもできるのか-
場所法のやり方は-
その疑問にお答えします。
なぜ場所法は記憶しやすくなるのか
まずは、なぜ場所法が記憶力を上げるのか、場所法は誰でも習得できるのか、について考えていきましょう。
場所法の価値-場所法って本当に使えるの?
場所法は古代の弁論家たちが演説の内容を覚えるために使っていたとされ、今でも記憶力の世界大会などで利用されている歴史ある記憶術です。
はい、権威付けが終わったところで、原理を考えてみましょう。
場所法の前提となっているのは「人は【場所の記憶】を覚えやすい」という性質です。
・自分にとって意味のあることは覚えやすい → 「今、どこにいるか」は生存のために大切
・何度も経験していることは覚えやすい → 馴染みのある場所は何度も見る
・エピソードと結びついていることは覚えやすい → その場所で起こることや役割
実際どうでしょう?
家から学校・職場までの道は高レベルで覚えてますよね?
自分の部屋はどうですか? どこに何があるか、ある程度わかりますよね?
物理的にも、海馬には「場所ニューロン」と呼ばれる特定の場所に反応する仕掛けがあるようです。
場所法では、この【場所の記憶】に覚えたい知識を関連付けることで記憶しやすくするのです。
これは【イメージ関連付け】のプロセスにあたります。
このプロセスが《精緻化》の役割を果たすことで、より覚えやすくなるのです。
人は「場所の記憶」を記憶しやすい
場所法の期待-才能ある人だけのスキルじゃないの?
「でも結局、場所法は才能ある人だけができるスキルじゃないの?」
実際、できる人(例えば世界大会入賞者や、ホームズの「記憶の宮殿」)を見ていると、自分にはできないんじゃないかとも思ってしまうかもしれません。
でも利用している原理は、誰にでも当てはまる原理です。
【場所の記憶】は誰でも持っています。
あとは、覚えたいことを【場所の記憶】に結びつける【イメージ関連付け】を磨けば、場所法は誰にでも習得可能なのです。
場所法のやり方
基本的な流れ
① 使う【場所の記憶】を決める
② 【場所の記憶】を使いやすい形に整える
②-A アクセスポイントを抽出する
②-B アクセスポイントに順番を設定する
③ アクセスポイントに覚えたいことを関連付けていく
使う【場所の記憶】はなるべく身近で馴染むところがいいでしょう。
画像を使って行うタイプや自分で場所を想像するタイプも存在はしますが、最初はあまりおすすめしません(→【場所の記憶】の原理へ)。
アクセスポイントは決めた【場所】の中の具体的なポイントのことです。
例えば「部屋」の中の「机」「本棚」「扉」「窓」「ベッド」「ぬいぐるみ」などがアクセスポイントになります。
また、アクセスポイントには順番を設定しておきましょう。「通学路」などならわかりやすいですが、部屋の場合も入り口から辿りやすいルートなどで設定できるでしょう。
順番を設定しておくことで、順序も含めて場所法で記憶できます。
場所法 LEVEL1 体でやってみる
最も身近な【場所】。
それは「自分の身体」です。
まずは身体の各パーツをアクセスポイントに設定して、場所法を試してみましょう。
とりあえず上から
①頭、②胸、③背中、④右手、⑤左手、⑥お腹、⑦腰、⑧お尻、⑨右足、⑩左足
と10個のアクセスポイントを設定してみました。
増やそうと思えばもっと増やせますね。
で、とりあえず下のワードリストをふつうに覚えていってもらえますか?
順番は無視で大丈夫です。
‐カレーライス
‐ミートパスタ
‐オムレツ
‐おでん
‐ハヤシライス
‐エリンギのソテー
‐豚の生姜焼き
‐フカヒレスープ
‐寿司
‐スイートコーン
目をつむって思い出してみてください(薄目あけないでください)。
何個思い出せました?
10個思い出せた人は知りません。
その他の人たち、次は場所法を使ってみてください。はい、どうぞ。
どうですか、全部言えました?
まあ訓練が必要ではあるので、できなくてもしょげないでください。
ちなみに私の場合は、
①頭-スイートコーン(頭に乗せれそう)
②胸-オムレツ(好き➡♡)
③背中-フカヒレスープ(背びれのイメージ *実際には尾ぶれの方が良いらしい)
④右手-カレーライス(お皿を持つイメージ)
⑤左手-ハヤシライス(カレーと左右対称)
⑥お腹-ミートパスタ(腸のイメージ)
⑦腰-エリンギのソテー(ソテー➡ソファー)
⑧お尻-豚肉の生姜焼き
⑨右足-寿司(短い言葉を踏んでみた)
⑩左足-おでん(短い言葉を踏んでみた)
( )の中を考えられたかどうかで【イメージ関連付け】のセンスが問われます。
場所法は【場所の記憶】に加えてこの【イメージ関連付け】の熟練が必要です。
したがって、イメージできないような言葉は場所法と相性が悪くなります。
(少し難易度は上がりますが、文字をそのままイメージしたり、語感や五感をつかったりすることで解決はできます)
場所法 LEVEL2 自分の部屋でやってみる
身体に場所法の流れを掴んだら、実際に自分の部屋でやってみましょう。
学校や職場までの道のりでもありです。
8個以上のアクセスポイントを用意してみてください。
はい、下のワードリスト、今度は順番も含めて覚えてみてください。
① 佐藤さん
② 鈴木さん
③ 高橋さん
④ 田中さん
⑤ 伊藤さん
⑥ 渡辺さん
⑦ 山本さん
⑧ 中村さん
⑨ 小林さん
⑩ 加藤さん
どうでしょう?覚えられましたか?
単なる名前だと難しいですね。
知り合いに全員いれば使えるかもしれません。漢字のイメージを用いるのもありです。
ちなみに上記は「2018年全国苗字ランキング」のTop10です。
私は先ほどの身体のアクセスポイントで全部覚えることができました。
面白いのは、カレーライスの方のワードリストも覚えられていることです。
【場所の記憶】は使い回せるのです。
場所法 LEVEL3 色々な場所を使ってみる
他にもなじみ深い場所で練習してみましょう。
気に入った画像や想像上の場所でも構いません。
いろいろな【場所の記憶】をストックしておくことで、覚えたい対象に合った場所法を実行できます。
場所法 LEVEL EX 記憶の宮殿
場所法はいろいろな名前で知られています。
その1つが「記憶の宮殿(メモリー・パレス)」です。
かの名探偵シャーロック・ホームズや『ハンニバル』のレクター博士などが使います。
(どっちも創作ですが、記憶の宮殿をリアルに使う人はちゃんと実在しています。)
基本的には場所法と同じですが、記憶の宮殿ではよく「鍵(キー)」という考え方が採用されています。
機会があれば、「記憶の宮殿」に関してもより実践的に解説していくつもりです。
場所法は、意外とできる記憶術
- 場所法は、「場所の記憶」にイメージを結びつけて記憶する方法
- 場所法は訓練次第で誰でも習得できる
- 場所法の素材として、身体・自分の部屋・通学/通勤路などが使える
場所法はやってみると意外とできます。
もちろん、いきなり莫大な量の記憶は難しいでしょう。
しかし【場所の記憶】をストックし、【イメージ関連付け】のトレーニングを積むことで、可能になります。
またトレーニングの過程では、何かを覚えるのが楽しくなってきます。
だんだん記憶できる量も増えてくるので、自己効力感も高まるでしょう。
学んで損のない、場所法-
目指せ、メモリーマスター。
「部屋」か「通学路・通勤路」の記憶を使って、「平成の内閣総理大臣(17人・ダブりあり)」を覚えてみよう