今回は「テスト効果」についてお伝えします。
記憶を促進するためのトップクラスに有効なテクニックです。
これを実践すれば、あなたの学習は大きく変わることになるでしょう。
何度読んでも覚えられない貴方に
「明日は世界史と英語のテストがある」
「会議までにこの資料の内容覚えておきたい」
「「でも覚えられない!」」
そんなあなたに質問です。
「テスト効果」というものを知っていますか?
知らないのならラッキーです。
今日からあなたの学習は劇的に変わることになるでしょう。
テストと聞くと嫌なことばかり思い出すかもしれません。
しかしテスト効果を知ればあなたにとって「テスト」は大きな味方になるでしょう。
今回はテスト効果の意味と根拠。さらなる効果を上げるためのテクニックをお伝えします
テスト効果とは
テスト効果とは、テストする、つまり「思い出す」ことによって記憶の長期化が促進される効果のことです。 またテスト効果を得るために思い出すことを「想起練習」といいます。
テスト効果は数々の実験によって証明されています。
しかし、この事実を知らない多くの人は、今でもテキストや資料を何度も読み返す学習を続けています。
2006年のRoedigerとKarpickeの論文によると、ある科学的な文章を読んだ学生のうち、単純にテキストを再読したグループよりも、テキストを一度読んだ後にテストを行ったグループの方が二日後・一週間後に覚えている量が多かったことが分かっています。
(*「Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention」)
学習においてテストは「結果」を測るものではありません。
学習効果を高めるための「ツール」であり「手段」なのです。
テスト効果(想起練習)のメリット
テスト効果のメリットを二つ挙げておきましょう。
① 分かることと分からないことを区別できる
テストによって自分が理解していないことが浮き彫りになるので、その点を重点的に再学習することができます。
② 脳が記憶を整理しつながりを強化する
思い出すことで脳が記憶をもう一度整理し直します。この時に記憶同士の繋がりが強化され次回思い出すのが簡単になるのです。
テスト効果の根拠
テスト効果の存在は様々な実験によって証明されています。
いくつか例を挙げておきましょう。
① コロンビア中学校 、理科の授業にて
この学校では、理科の授業のある範囲については学期中に小テストを3回、また別の範囲についてはテストを実施せず復習を行いました。
結果、テストを行った範囲の成績は平均Aマイナス、テストを行わず復習だけ行った範囲の成績は平均 C プラスとなりました。
(*「Test-enhanced learning in the classroom: long-term improvements from quizzing.」)
② ワシントン大学、国際政治経済の講義にて
『使える脳の鍛え方』の著者の一人であるピーター・ブラウンがワシントン大学の教授であるアンドリュー・ソーベルに対して行なったインタビューによると、 ある講義にてそれまで行なっていた3回の試験を9回の小テストに変えたことによって、学期末のレポートの成績がはるかに上昇しました。
テスト効果は単純に記憶を促進するだけでなく、学習内容の理解も促進しているのです。
テスト効果(想起練習)のやり方
では、私たちはがテスト効果を得るためには何をすればいいのでしょうか?
難しく考える必要はありません。
テストをすればいいのです。
テキストを再読する前に、テキストの内容について自分に質問してみましょう。
また、学んだ内容の重要箇所について自己テストしてみるのもいいでしょう。
当然、友達に問題を出してもらうのもありです。自分で予め問題を作っておいてもいいかもしれません。
とにもかくにも、テストをすればいいのです。
最初は煩わしいでしょうが、すぐに効果を実感できると思います。
3回読んでも覚えられなかったことが、1回テストをするだけでより長い間記憶することができるはずです。
明日の会議の資料について、どこが議題にになるのか、何が重要なのか、一度資料を下において、自分に問いかけてみてください。
と、テスト効果(想起練習)を取り入れるのは簡単です。
でも、もっと効果を上げるためのテクニックも存在します。
次はそのテクニックについても見ていきましょう。
テスト効果をさらに向上させるために
..テスト効果向上のコツ① 間隔をあけてテストする
すぐに何度もテストするより、間隔をあけて何回かテストした方がテスト効果が高まることが証明されています。
これは分散学習と呼ばれる学習法です。過去に LearnTernでも紹介したことがあります。詳しくはそちらの記事を参照してください。
1日後にテストしたら次は一週間後、その次は1ヶ月後という風にテストすることで、より長期の記憶が構築されるのです。
テスト効果向上のコツ② フィードバックを取り入れる
テストをするだけよりも、そのテストについてのフィードバックを入れた方がテスト効果が高まることが分かっています。
さらに言うと、すぐにフィードバックを与えるよりも少し遅らせてフィードバックした方が良いとされています。
一問一問答えるために、答えと解説を示すよりも、何本かまとめて行った後に答えを示した方が効果が上がるのです。
また特に運動技能の習得においては、すぐにフィードバックを入れてしまうと、フィードバックもプロセスの一つとして学習されてしまい、本番で上手くいかないといった報告があります。
テスト効果向上のコツ③ 思い出すのに苦労する
テスト効果は一般的に、思い出すのが難しい時ほど高い効果が得られると言います。
私たちは、思い出せないと思うと、すぐに答えを見てしまいがちですか、そこをぐっとこらえて頑張って思い出そうとすることによって、より高いテスト効果が得られるのです。
テスト効果で学習を変えよう
- テスト効果は、思い出すことによって記憶の定着を促進する効果
- テスト効果は、様々な研究で実証されている
- テスト効果を高めるためには分散学習やフィードバックなどの工夫をすると良い
テスト効果はちょっとの工夫で大きな成果を得ることができます。
テキストを何の工夫もなく何度も何度も再読しても大きな効果は得られません。
自分は記憶力が悪い、頭が悪い。そんなふうに思ってしまっている人こそテスト効果を実感してみてください。
きっとあなたの学習は今日から大きく変わることになります。
テスト効果はファインマンテクニックによっても促進されます。
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