今回のLearnTernでは「検索練習」を紹介します。
検索練習は学習効率を上げるのに有効な技で、多くの研究がその有効性を支持しているものです。
しかし検索練習を有効に活用している学習者は少なかったり。
記事の後半では、確実に検索練習に取り組み始めるための考え方を紹介します。
検索練習とは?
検索練習とは、学んだ内容を思い出すことで記憶効率を高める学習法のことです。
テキストの内容を見ずに思い出したり、問いに答えたり、フラッシュカードを使ったりするのはすべて「検索練習」になります。
以前紹介した「テスト効果」とほぼ同じなので、詳しくはそちらを読んでください。
今回は検索練習の原理というよりは、「(絶対やったほうが良い)検索練習に取り組むためにどうする?」という記事になります。
検索練習のメリット
まずは検索練習のメリットを軽く押さえておきましょう。
大きく分けて2つのメリットがあります。
「記憶」と「理解」です。
検索練習に取り組むと、記憶強度が上がる
“記憶から情報を取り出す行為は効果の高い学習法”
(認知心理学者 ボブ・ビョーク)
思い出すのは苦労を伴う行為です。
「復習するわ」と言って、テキストをもう一度読む(再認プロセス)の方が何倍も楽かもしれません。
しかし、記憶強度を高めるのは思い出す(想起、検索)プロセスなのです。
(→記憶のプロセスについては以下の記事)
原理的ことを言い出すと大変ですが、納得感を高めるためにも2つほど書いておきます。
(研究結果の方を知りたい人は「テスト効果」の記事を)
まず、記憶はネットワークのような形になっていると考えられています。
このネットワークは、使っていないと弱くなっていきます。
逆に頻繁にアクセスすれば、ネットワークが活性化され、強化されていくのです。
思い出すという行為は、このネットワークの活性化を促進します。
また、思い出すプロセスの中で、私たちは対象の記憶を編集・解釈します。
基本的に記憶というのは「処理水準(どれだけその情報について思考したり加工したりするか)」を高めることで強くなっていくので、この編集・解釈がとても有なのです。
――検索練習は記憶を強固なものにする。
頭と心に刻み込んでください。
検索練習は、理解の促進にも役立つ
検索練習は編集・解釈を伴います。
また、思い出す過程で、さまざまな繋がり・論理関係を辿っていくこともあるでしょう。
これらのプロセスは理解をすすめたり、深めたりしてくれます。
有能な教師ほど質問を巧みに使いこなすでしょう。
あれは生徒の検索練習を促しているのですね。
検索練習を使わない……?
検索練習はメリットの高い学習法。
多くの研究がその有効性を支持しています。
一方で、実際に検索練習を積極的に使っている学習者は多くありません。
テスト効果の研究で著名なKarpickeとRoedigerらが大学生を対象に行った調査では、「メモや教科書を繰り返し読む」学生に対して、「検索練習を活用している」学生は少数であることがわかりました。
先程も言いましたが、検索練習よりテキストの再読の方が楽です。
しかしその効果は限定的。
検索練習をした方がいいのです。
それでもやらない人がいる。
そこで今回、「方略利用の発達段階」なるものを引っ張り出してきました。
検索練習に取り組むために
「方略利用の発達段階」とは、人がどのような段階を経て方略(メソッド、テクニック)を実践できるようになるのか、という研究分野です。
ざっくりまとめると以下の三段階。
媒介欠如:「そもそも方略を知らない」
産出欠如:「知っているのに使わない」
利用欠如:「上手く使えない」
今回着目したいのは2段階目「産出欠如」。
その方法を知っているのにできないこと、いっぱいありますよね。
原因の一つは、タイミングをわかっていないこと。
その方法を使えるタイミングを見逃してしまうパターンです。
しかしながら、学習に関してそれはあまりないです。
学びたければいつでもやればいいのですから。
したがって、もう一つの原因に目を向けることになります。
それは「価値の認識が低い」こと。
方略の価値 = 有効性 / コスト
なので対策としては、
→① 有効性を上げる
→② コストを下げる
のどちらかです。
検索練習の有効性を上げる
上で検索練習のメリットを挙げましたが、あれらはとても抽象的なものです。
基本的に、時間的に近い行動に影響を与えるために重要なのは「具体化」。
(逆に時間的に遠い行動に影響を与えるのは抽象的なものです)
自分が検索練習に取り組むメリットを具体化してみましょう。
あなたにとっての利益は何ですか?
単位? 成績?
数字は?
褒められること? 勝てること?
誰に?
とにかく具体的にしてください。
これが有効性の認知につながります。
検索練習のコストを下げる
テストというと大変そうですが、大事なのは「思い出す」プロセス。
とりあえずこのプロセスがあればいいのです。
別にテストやフラッシュカードを準備する必要はありません。
テキストを前にして、何が書いてあったかを口に出してみるのです。
できればだれかに説明するつもりで。
めちゃくちゃ効果的な検索練習です。
時間コストを下げたいのであれば、タイミングを考えてみましょう。
信号の待ち時間、電車に乗っている時、スマホの通信制限で苦しんでいる時など、いろいろなタイミングを検索練習の時間に変えてしまいましょう。
基本的に思い出すだけなので、何も持っていなくてもできるのです。
一応、フィードバック(答え合わせ)があった方が効率が上がるので、スマホで写真をとったりメモっておいたりしておきましょう。
今回は検索練習の導入のために「方略利用の発達段階」から産出欠如対策を持ってきましたが、この方法は他にも応用できます。
あんまり有名ではないですけど、めちゃくちゃアリなメソッドなので、ひっそり有効活用してみてください。
検索練習はやらなければならないこと
基本的にLearnTernは、学習者が「やった方がいいこと」を発信しています。
しかし今回ばかりは違います。
――学習者なら、検索練習はやらなければならない。
それくらい大事で、役に立ち、意味のあることです。
ぜひ取り組んでみてください。
あなたにとっての検索練習のメリットと、検索練習のタイミングを書き出してみよう
*Akiのあとがきnoteはこちら→『【あとがき】絶対不可欠スキル「検索練習」』
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