【第2回】記憶に関するあれこれ【認知心理学のすすめ(全5回)】

【第2回】記憶に関するあれこれ【認知心理学のすすめ(全5回)】

認知心理学-記憶について考えてみよう

 

「認知心理学のすすめ」第2回です。
今回は「記憶」について考えてみます。
 
なお、本記事では認知心理学における記憶の研究をダイジェスト版でお伝えしますので、より詳しいことが気になる方は今後更新される(はずの)詳細版をお読みください。
 
さて、では初めての「記憶」の旅へ、ご案内です。
【認知心理学のすすめ】
 

記憶の3プロセス「覚える」「保持する」「思い出す」

 

まずは記憶のプロセスについてです。基本的に3つのプロセスがあるとされています。
 
第1に「覚える」、第2に「保持する(覚えておく)」、第3に「思い出す」
なんとなくイメージできますよね?
 
これらをそれぞれ「記銘」「保持」「想起」というのですが、認知心理学の世界ではよりコンピューターちっくな表現を使ったりします。
すなわち、
符号化・貯蔵・検索
です。
 
符号化とかちょっとカッコいいですね。
 
外部の情報を自分の頭に保存できる形に変換するのが「符号化」。
符号化された情報を内部の記憶装置に保存しておくのが「貯蔵」。
貯蔵された情報・知識を必要に応じて取り出してくるのが「検索」。
 
この3プロセスは認知心理学の記憶分野の基礎になります。きっちりと覚えておいてくださいね。
 

記憶の方法-「リハーサル」と「精緻化」

 

明日は英単語のテスト
あなたはどのように勉強しますか?
英単語を何度も何度も反復して覚えようとする人。
その覚え方を「リハーサル」といいます。
リハーサルでも覚えることは可能ですが、もしかしたら明日のテストが終わってしばらくしたら忘れてしまうかもしれません(認知心理学における「忘却」に関してはまた別の機会に…)。
他にも覚え方はありますよね。
例えば、ある単語をストーリーやイラストを使って覚えたり、他の単語との関連性で覚えたり。
このように意味を付け加えて覚えるやり方を「精緻化」といいます。
リハーサルよりも精緻化された記憶の方が、より長期記憶になりやすいとされています。
精緻化にもさまざまな種類があるのですが、それらについてはまたの機会にしておきましょうか。
 

マジカル・ナンバー7とチャンキング

 

ミラーという心理学者が「マジカル・ナンバー7」というものを発見しました。
 
これは、いわゆる短期記憶の容量についての研究です。
 
下の文字をできる限り覚えてみてください。(何度も読まないでくださいね)
あ は き ね ち ん え が つ れ む じ せ きゅ
 
はい、画面を見ないで覚えている文字を書き出してみてください。
 
書けたら答え合わせしてみてください。
 
たぶん「あ」と「きゅ」は書けたのではないでしょうか?
これは「初頭効果」と「親近性効果」と呼ばれるものなのですが、詳しい解説はまたにしましょう。
 
さて、あなたが覚えることのできた単語の数ですが、5~9の間ではないでしょうか?
 
いやまあ違うかもしれません。実験環境が雑なので……。
 
昔ミラーさんは平均的な記憶容量が7±2であると導き出しました。
しかし話はまだ続きます。
もう1回記憶実験にお付き合いください。
 
かわむら しんどう なかむら ふじい さいとう こじま さとう たけうち みしま むとう よねばやし
 
さっきと同じように画面を見ずに書き出してみてください。
何文字覚えてました?
 
文字数でいうと先ほどよりもはるかに多いでしょう。
単位を(人)にしてみると、なんと7±2に収まっているはずです。
 
これがマジカル・ナンバー7の正体。
データ量的に言うと、2回目の方が多く記憶できているわけですが、覚えられているカタマリの数は常に7±2なのです。
 
このカタマリのことを「チャンク」といいます。
そしてデータをチャンクに加工することを「チャンキング」といいます。
 
チェスや将棋のプロは盤面を数秒で完全に覚えることができるといいます。
これは豊富な経験と知識によってコマの配置をチャンキングしているからできる芸当なのです。
 

記憶の仕組みをイメージしよう

 

今回の旅で見たのは「符号化・貯蔵・検索のプロセス」「リハーサルと精緻化」「マジカル・ナンバー7とチャンキング」でした。
 
認知心理学では他にも「符号化特定性原理」「記憶の種類」プライミング」「TOT現象」などさまざまな記憶に関する研究がなされています。
今後順番に紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
 
それでは今回はこのあたりで。
 
覚えないといけないことを探して、精緻化のやり方を考えてみよう

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