今回のLearnTernでは「ワーキングメモリ」を紹介します。
研究者、実践者双方に人気が高いワーキングメモリ。
活用するための2方向のアプローチをはい、どうぞ。
ワーキングメモリの話
ワーキングメモリの話をしていくわけですが、今回あまり理論的な話をしません。
「音韻ループ」「視空間スケッチパッド」「中央実行系」「エピソードバッファ」みたいな構成要素の話とかあるんですけど、この辺は実験も絡めて書いていかないと微妙なんですよね。
さらに学習者にとってこの辺の話が役立つかといわれるとNo。
ワーキングメモリに関して学習者が知りたいのは、
「ワーキングメモリってそもそも何?」
「ワーキングメモリって学習や仕事に役立つの?」
「ワーキングメモリを学習や仕事に活かすためには何すればいい?」
みたいなところだと思うので、この辺に答えていきますね。
*理論的な話を知りたい方はBaddeleyの論文から読み始めると良いと思います。
そもそもワーキングメモリとは?
ワーキングメモリとは、短い間、記憶を保持し、またその記憶を操作する能力のことです。
「短期記憶」の概念をもうすぐアクティブにした感じ。
わかりにくいですね。
比喩で説明してみましょう。
ワーキングメモリはよく作業机に例えられます。
勉強机でもいいですよ。
学習したり仕事したりするときに机に向かいます。
この机、広い方がいろいろ資料とか見ながらできますよね?
狭い机だと、いちいち使う資料を引き出しから出してこないとです。
ワーキングメモリの容量が大きい=作業机の広い
では少し体験してもらいましょう。
A=5、B=3、C=8、D=10、E=C+D、F=C-A
まずは上の方程式を頭に入れてください。メモはなしです。
入れましたか?
では画面をスクロールさせて、方程式が見えないようにしましょう。
しました?
ズルはなしですよ?
ではいきます。
D+B-E=?
どうでしょう、解けたでしょうか。
答えはこの章の最後に伝えるので覚えておいてくださいね。
今あなたは頭の中で計算をしたわけですが、このときAからFまでに当てはめられた数字を使いました。この数字はワーキングメモリを使って覚えているわけです。
覚えているだけじゃなくて、操作したのです。
ワーキングメモリの容量が大きい人はより多くを覚えておき、正確に操作することが可能となります。
ワーキングメモリについてわかってきましたか?
<解答>
D+B-E=-5
(容赦なく負の数)
ワーキングメモリを活用するメリット
ワーキングメモリを活用することでどのようなメリットがあるのか。
具体的な例をいくつか挙げておきます。
基本的にワーキングメモリが大きいほど、高い認知能力を発揮できるとされています。
(ただ、ある領域では「洞察問題に関してワーキングメモリが負の影響を持つ?」みたいな研究も行われていたりします。まだ結論出ていないのであまり気にしないでください)
「ワーキングメモリ、いいね!」
「で、ワーキングメモリを活用するために何すればいいの?」
はい、今回ワーキングメモリ活用のためのアプローチを二つ、用意しておきました。
まずは各アプローチの概要について説明していきましょう。
ワーキングメモリ活用の2つのアプローチ
ワーキングメモリ活用のアプローチは次の2つ。
■「ワーキングメモリを解放する」→(ワーキングメモリ容量の節約)
■「ワーキングメモリをトレーニングする」→(ワーキングメモリ容量の増量)
「ワーキングメモリを解放する」アプローチは、現状のワーキングメモリ容量のまま、より上手く使おうというものです。
つまり、すぐに効果を得られます。
作業机から今の作業に必要ないものを片付けたり、使いやすいように整理したりするイメージです。
「ワーキングメモリをトレーニングする」アプローチはワーキングメモリ能力を高めてしまおうというアプローチになります。
継続的なトレーニングが必要なので、すぐには効果が得られないかもしれません。
でも認知能力が上がることは明らかです。
作業机を広げるために素材を継ぎ足していくイメージでしょうか。
買い換えるのは無理ですからね。
でもこの先、脳科学が発展していけば物理的に継ぎ足せるようになったりして。
ワーキングメモリを解放する方法
ではまず「ワーキングメモリを解放する方法」アプローチから紹介してきます。
ワーキングメモリ解放① メモに書き出す
メモに書くと、その内容を一度忘れることができます。
何か気にかかることがある時、覚えておきたいタスクがある時。その情報はあなたのワーキングメモリを圧迫しているので、パフォーマンスに影響が出てきます。
それを防ぐためにメモを活用しましょう。
今の作業に関係ないけど考えてしまうことは全部メモに吐き出しちゃってください。
あと、創造的な活動をしている時にもメモは役立ちます。
あれはワーキングメモリを解放することでより新しい発想を生み出す余地をつくっているのです。
さらに、先程の問題中メモは禁止しましたが、現実にメモが禁止される状況などあまりありません。
必要な情報はメモにとって、ワーキングメモリをなるべく節約してみましょう。
ワーキングメモリ解放② 瞑想する(マインドフルネス)
瞑想もワーキングメモリの解放に役立ちます。
マインドフルネスですね。
コツは関係ないことを「考えないように」するのではなく、「流せる」ようになること。
おすすめの書籍はこちら。
ワーキングメモリ解放③ 休憩する
脳も身体の一部。疲れます。
疲れた状態ではワーキングメモリもその性能を落としてしまうでしょう。
だから疲れたときには素直に脳を休ませるのもあり。
短時間の仮眠(パワーナップ)は脳の休息になるので、導入してみてください。
ワーキングメモリをトレーニングする方法
次はワーキングメモリをトレーニングするアプローチを紹介していきます。
トレーニング① 運動しながら知的作業を行う
並列作業をするとワーキングメモリを鍛えられたりしますが、基本的にマルチタスクは割けるべきです。
作業効率・学習効率がガタ落ちするからです。
ではどうするか?
運動と知的作業を組み合わせてみましょう。
ランニングしながら計算をする。
家事をしながら、記憶トレーニングをしてみる。
運動と計算の組み合わせなどは老化防止にも効くとされています。
普段、高度な知的活動を行っていないタイミングに知的活動を重ねることでワーキングメモリを鍛えることができるはずです。
トレーニング② イメージング
日本におけるワーキングメモリの権威、苧阪直行氏が提唱する方法です。
何かを覚えようとする時、脳内にイメージを描くことがワーキングメモリのトレーニングになるとしています。
英単語などを覚える時にその単語の意味や使われる場面をイメージしてみましょう。
イメージ力は記憶術や速読にも役に立ちます。
トレーニング③ Nバック課題
またワーキングメモリを鍛えることのできる訓練として有名なのが「Nバック課題」。
これは説明するよりやってもらった方が良いと思うので検索してみてください。いろいろツールが出てきます。
私のオススメはメンタリストDaiGoさん監修のアプリ「DNB」。
スマホで簡単にNバック課題を行うことができます。
ワーキングメモリを鍛えよう
ワーキングメモリは認知活動のレベルと密接に関係しています。
脳の作業机を広げることができれば、認知活動のレベルは確かに上がるはずです。
私としてはメタ認知能力との関連性が重要だと思います。
メタ認知は相応のリソースを使う活動です。
きっとワーキングメモリのトレーニングがメタ認知能力向上の鍵となると思うので、私も日々DNBに邁進中です。
頭、良くなってみませんか?
DNBをやってみよう