知的好奇心について考えてみよう
「知的好奇心」
この言葉を聞いたことがない人はなかなかいないでしょう。
Huntによると知的好奇心とは、新しく奇妙な刺激や未知の情報を求めることで生じる情報処理プロセス固有の動機づけ、であるとされています。
初めて見聞きしたものや奇妙なもの、未知のもとに対峙したとき、私達は「もっと知りたい!」と思うようにできているのです。
したがって、「知的好奇心」はLearnTernのテーマである「学習」と深く結びついています。
学習の大きな味方の1つが「知的好奇心」なのです。
そして実は知的好奇心は4つに分類することができるのです。
今回はこの4つの知的好奇心について理解した上で、知的好奇心がどのように私たちの学習と関わってくるのか考えていきたいと思います。
4つの知的好奇心ー知覚的か認識的か、拡散的か特殊的か
知的好奇心は昔から注目されてきた概念ですが、特に理論化が進んだのはBerlyne(1963)による知的好奇心の分類からでしょう。
Berlyneは知的好奇心を「知覚的好奇心/認識的好奇心」「特殊的好奇心/拡散的好奇心」の2軸4種に分類。整理しました。
ひと口に知的好奇心といっても4つの種類に区別できるわけです。
これから順番に解説していきますが、そのまえにそれぞれの意味をイメージ・予測してみてください。
先にイメージして実際との差異を把握することで、より理解が深まります。
予測はできましたか?
では進みましょう。
知的好奇心の分類① 知覚的好奇心と認識的好奇心
1つめの分類は、「注意」レベルの知的好奇心と「学習」レベルの知的好奇心に分けたものです。
知覚的好奇心 とは
「注意」レベルの好奇心を「知覚的好奇心」といいます。
ある対象に向けられリ注意を喚起したり持続したりする性質のものです。
意外なことや面白そうなことに出会ったとき、「おや?」「何?どういうこと?」とか思うことがあるでしょう。
それが知覚的好奇心です。
最も「好奇心」という言葉が似合うのがこの知覚的好奇心かもしれません。
知覚的好奇心は、自分の日常を構成する認識的枠組み(自分のフレーム)と、外界から得られる情報との「ズレ」を感じたときに生じます。
認識的好奇心 とは
「学習」レベルの好奇心は「認識的好奇心」です。
知覚的好奇心の段階で生じた疑問や誤解を解決するために情報を集め、理解しようとするプロセスになります。
研究者はこの認識的好奇心がないと仕事にならないでしょう。
また学習者としても重要になってくるのがこの認識的好奇心です。
知覚的好奇心が生じても、認識的好奇心がなければ学習意欲には繋がりません。
自分のフレームと新情報との間の「ズレ」を埋めようとするダイナミックな動きが認識的好奇心なのです。
知覚的好奇心:「注意」が向くレベルの好奇心
認識的好奇心:「学習」したいと思うレベルの好奇心
知的好奇心の分類② 特殊的好奇心と拡散的好奇心
2つ目のの分類では、先程から登場していた「ズレ」が焦点になります。
「ズレ」は自分のフレーム(常識や世界観)と環境から得られる新情報とのギャップのことです。
特殊的好奇心 とは
1つ目のの分類で紹介した認識的好奇心は、この「ズレ」を低減するプロセスでした。
このような「ズレ」の低減を図ろうとするプロセスを「特殊的好奇心」と呼びます。
拡散的好奇心 とは
一方、「ズレ」が全く生じていない状態に私達は退屈を感じることがあります。
そんなとき、「ズレ」を感じられるような刺激を求めるプロセス。
それが「拡散的好奇心」です。
日常の中で刺激を求めたり、ちょっと手持ち無沙汰なときにSNSで情報を集めたり、拡散的好奇心は、意識してみると結構あります。
以上、4つの知的好奇心を見てきました。
次からは知的好奇心を学習に役立てるためのアプローチを考えてみましょう。
特殊的好奇心:「ズレ」を減らそうとする好奇心(知らないことを知ろうとする)
拡散的好奇心:「ズレ」を増やそうとする好奇心(知らないことを見つけようとする)
知的好奇心を学習の動機づけに使うには?
学習者目線で、最重要視したい知的好奇心は4つの内どれでしょうか?
私は「認識的好奇心」を答えとしています。
実際にはそれぞれシステマティックに結びついているのですが、学習意欲に最も影響を与えるのは認識的好奇心です。
もう1つ質問です。
知的好奇心を扱うためのキーワードは何でしょうか?
はい、「ズレ」です。
何度も登場しましたね。
学習をこの文脈で再定義してみましょう。
学習とは、「ズレ」を埋めることで新たなフレームを手に入れること
ここから知的好奇心を学習に利用するプロセスを構築します。
① 「ズレ」をつくる(意識する)
② 「ズレ」を埋める
①と②の間で「ズレ」を埋めたい!という気持ちになれるようにプロセスをデザインできれば成功です。
具体的な方法を1つ挙げましょう。
それは「予測・イメージ」を用いたものです。
「事前のイメージ・予測が知的好奇心を刺激する」
4つの知的好奇心を説明する直前を思い出してください。
それぞれの意味についてイメージ・予測するようお願いしたのを覚えているでしょうか?
人は何らかの問いに対して自分なりの答えを出したとき、正しい答えを知りたがるものです。
これも一種の知的好奇心になります。
“答えを知らない状態”が「ズレ」を生むのです。
つまり方法としては、
これから学習するものに対して、自分なりのイメージ・予測をアウトプットする
になります。
知的好奇心をメタ認知しよう
- 知覚的好奇心は「注意」レベル、認識的好奇心は「学習」レベル
- 特殊的好奇心は「ズレ低減プロセス」、拡散的好奇心は「ズレ増加プロセス」
- 事前のイメージ・予測によって「ズレ」が生まれる
知的好奇心を意識してみたことのある人は、なかなかいないと思います。
知的好奇心をメタ認知してみましょう。
しかし、知的好奇心は学習者にとってモチベーションの源泉であり、またより深い理解を助けてくれます。
今回紹介した「事前のイメージ・予測が知的好奇心を刺激する」テクニックを使えば、ちょっとモチベーション上がらないな、と思うような学習テーマや離床の読み込みも効果的なものに帰ることができます。
ぜひ試してみてください。
「事前のイメージ・予測が知的好奇心を刺激する」テクニックを使ってみる