今回のLeranTernではKurt Fischerが提唱した「発達範囲」を紹介します。
以前学んだ「発達の最近接領域」から生まれたものです。
この発達範囲は年齢を重ねるほど拡がっていくとされています。
学習者にとって、これが何を意味するのか?
見ていきましょう(今日は短め)。
Vigotsky「発達の最近接領域」、覚えてる?
以前紹介した「発達の最近接領域」を覚えているでしょうか?
私たちには「自力でできる」領域と「誰かに助けてもらっても難しい」領域、そして「自力では難しいけど、誰かの協力があればできるかもしれない」領域があります。
3つ目の「自力では難しいけど、誰かの協力があればできるかもしれない」領域を発達の最近接領域と呼びます。
成長するためにはこの「最近接領域」に居なければならないのです。
Fischerの「発達範囲」とは?
今回紹介するFischerの「発達範囲」も意味としてはほぼ同じです。
そもそもVigotskyの理論を元にしています。
少しワードと図が異なるので、確認しておきましょう。
①「機能レベル」
機能レベルは、他者や環境の支援がない状態のMAXパフォーマンスレベルです。
自力でできる領域のことですね。
②「最適レベル」
最適レベルは、他者や環境の支援がある状態でのMAXパフォーマンスレベルです。
最近接領域と少し違うのは、「他者」に加えて「環境」も入っているあたりですね。
他者による直接的サポート以外に、間接的(環境的)なサポートもアリだと考えておきましょう。
③「発達範囲」
そして発達範囲。
これは機能レベルと最適レベルのギャップのことです。
サポートありの状態で発揮できる能力とサポートなしの状態で発揮できる能力のギャップになります。
授業や研修でできていたことを実践できないのは普通のことです。
授業では「最適レベル」、実践(独力)では「機能レベル」の力が発揮されているからですね。
「発達範囲」を意識できていなければ、このギャップに驚いてしまうでしょう。
もしくは「ダニング=クルーガー効果」に陥ってしまうかもしれません。
このレベルの差をメタ認知しつつ、着実に能力を成長させていきましょう。
さて、ここまでは割と普通の内容。
Vigotskyの最近接領域をきっちり理解していれば何の問題もないでしょう。
――本題はここからです。
発達範囲は年齢と共に拡がっていく
Fischerの発達範囲について今回着目したいポイント。
――発達範囲は年齢と共に拡がっていく。
Vigotskyは、この発達範囲の部分は成長に伴って縮小していくと考えていましたが、Fischerはその逆を提唱しました。
「発達範囲が拡がる」というのは、サポートあり/なしの状態でのパフォーマンスのギャップが拡がっていくということです。
獲得すべき能力がより複雑なものになるから、というのが理由のようです。
おそらく能力のランクが上がっていくことで、最適レベルの上昇率と機能レベルの上昇率に差が出てくるのでしょう。
私たちは、大人になるにつれて他者からの支援を不要とする傾向があります。
しかし科学的にはその逆。
より上位の能力を手に入れるためには、他者や環境の支援が不可欠なのです。
成長に不可欠な他者の支援
- 「最適レベル」と「機能レベル」があり、両者にはギャップ(発達範囲)がある
- 「発達範囲」は拡大していく
この2つを理解し、学習の指針に取り入れましょう。
必ずしも師匠を探さなければならないというわけではありません。
書籍や動画は溢れかえっていますし、子どもや家族が学習サポーターになることもあります(例:子どもに説明→質問してもらう)。
――“一流の学習者”は、調子に乗らない。
慢心せず、心地いい学びの日々を。
最適レベルと機能レベルについて、過去の経験を思い出してみよう