それ、何のせいにしますか?
成功したとき、失敗したとき。
その成功や失敗の原因をどこに求めますか?
あなた自身の努力?能力?
教えてくれる人のおかげ(せい)?
環境の良し悪し?
運が良かった(悪かった)?
このような、ある結果に対してその原因を考えるプロセスを「原因帰属」といいます。
原因帰属の在り方は、その人の行動やモチベーションに影響を与えることがわかっています。
原因帰属とはどのようなものなのか、どのような原因帰属が良いのか、見ていきましょう。
原因帰属理論とは?
先述の通り原因帰属とは、ある結果の原因を推測・判断するプロセスのことです。
原因帰属理論はその認知過程を研究する領域になります。
要は「何のせいにするか?」に関する認知的アプローチです。
そしてこの「何のせいにするか?」が行動やモチベーションに影響を与えるのです。
考えてみてください。
他人のせいにばかりしている人と、自身の努力が足りなかったと考えている人。
恐らく、この2人の明日の練習に対する気合は変わってくるでしょう。
逆にどのようなときでも自身の能力不足を嘆いてしまう人と、適度に環境要因のせいにする人。
自己効力感の観点でいえば、後者の方が良いかもしれません。
原因帰属のイメージ、掴めてきましたか?
原因帰属の3次元
Weinerによると、原因帰属は3つの次元で理解できるとされています。
原因帰属の3次元とは、位置(内的/外的)・安定性(安定/不安定)・統制可能性(統制可能/不可能)のことです。
位置の次元は、原因が自分の内にあるか、外にあるか。
安定性の次元は、その原因が時間的に安定しているものか、していないものか。
統制可能性の次元は、その原因をコントロール可能か、不可能か。
で、その3次元をまとめたものが下の表です。
表から8つの原因帰属が表れます。
① 能力
② 気分(調子)
③ 普段の努力
④ 一時的な努力
⑤ 課題難易度
⑥ 運
⑦ 教師のバイアス
⑧ 他者の助力
あなたはどのような時、どのような原因帰属になっていますか?
一度分析してみてください。
どのような原因帰属が望ましいのか?
自分の原因帰属の傾向が分かったところで、次に気になるのはどのような原因帰属が良いのか、ということですよね。
とはいっても一概に「この原因帰属パターンが良い!」と言い切ることは私にはできません。
そこで、今回は「学習者」ならこの「順位」で原因帰属を持った方がいいよね、というのをお伝えしたいと思います。
第1位|普段の努力
学習者としてはやはり日常的な努力に重きを置きたいものです。
成功や失敗に対して、普段の努力を振り返ることで、さらなる努力に繋がります。
第2位|一時的な努力
2位に入るのも努力。ただし今度は一時的な努力です。
普段の努力と一時的な努力の違いは、時間的安定性にあります。
学習者にとって継続的な学習は大事なので、この順位にしてみました。
とはいえ、いつもより頑張った自分にご褒美、もしくは直前に対策できた部分を対策しなかった反省というのも、自身のモチベーションを保つ上では大切でしょう。
第3位|能力
第3位は能力です。
実は、原因を能力に帰属してしまうことには危険性があります。
失敗時であれば自分の無能さを過剰に意識してしまい、成功時であれば自身の才覚の勘違いに繋がってしまうからです。
それでもこの順位に能力が来ているのはひとえに「自信」のためです。
成功時に能力への原因帰属を行うことは、自己効力感的にはプラスです。
逆に失敗時の取り扱いには注意しましょう。
第4位|課題難易度
4位は課題の難易度。Best4の中では唯一の外的(環境)要因です。
全ての原因を自分に帰属していては、環境に適応できません。
今の自分と課題を合わせて考えることも時には重要です。
哲学初心者がいきなり『純粋理性批判』を読んでも難しいでしょう。
特に教師側としてはこの要因には注意してあげるべきです。
5位以下に関してはまだ確信が持てていない部分も多いので、割愛させていただきます。
個人的には「運」という考えは学習に対して著しく害となる、と考えているので、この辺りが最下位かもです。
さて、1位から4位を発表させていただきましたが、ここで一つ大事なことを付け加えておきます。
原因帰属はどれか1つだけに定まるものではありません。
ある結果に対して複数の原因帰属が当てはまることもあります。
「今回の成功の一番の原因は、前日の努力だよね。でもA君の教え方が良かったのもあるよ。あと、意外と僕はこの分野の才能があるかもしれないぞ」
上のセリフから読み取れる原因帰属は④一時的な努力、⑧他者の助力、①能力の3つです。
このようなケースも多い、ということを意識しておきましょう。
重要なのは割合です。
上のケースだと、④一時的な努力を最も重要視しており、そこに⑧他者の助力と①能力が続いています。
上で挙げた優先順位に応じた割合になると、学習者としてはGoodです。
原因帰属を意識してみよう
今回は原因帰属理論について学んでみました。
「何のせいにするか」によって、私たちの行動とモチベーションは変化します。
よりよりパフォーマンスや学習のために、より適した原因帰属パターンを目指しましょう。
自信の原因帰属パターンを分析してみよう
参考)https://pdfs.semanticscholar.org/bd46/a85156fdeae2728fa6efb19d75ca7a0a5d87.pdf