マスタリー目標とパフォーマンス目標の違いを知って、学習モチベーションを操ろう!

マスタリー目標とパフォーマンス目標の違いを知って、学習モチベーションを操ろう!

(*本記事にて「エジソン」とすべき箇所が「アインシュタイン」となっていました。過去に読んでくださった方にはご迷惑おかけします。修正:2020/03/31)

目標の持ち方で、やる気や成績は変わる

皆さんは今、どんな目標を立てていますか?

目標には以下の4つの機能があるとされています。

① 方向づけ機能(目標に対して適切な行動を方向づける)
② 活性化機能(より努力を促進する)
③ 維持機能(努力の維持を促進する)
④ 間接的な機能(発見や方法の改善など)

学習も目標の立て方によって大きく効率性や有効性が変わります
そのため様々な目標に関する理論が提唱されていますが、その中でも今回は目標の種類に関する話をしたいと思います。

目標は2つの種類、マスタリー目標パフォーマンス目標に分けることができます。

マスタリー目標とパフォーマンス目標

マスタリー目標とは、自分の能力を高めるための目標
パフォーマンス目標とは、自分の能力を証明するための目標です。

主に「達成目標理論」の分野で用いられる考え方になります。

マスタリー目標

マスタリー目標は、「速く走れるようになる」「数学の点数を上げる」「マーケティングに精通する」などを指します。

マスタリー目標には習熟に対する意識を具現化する働きがあります。
「速く走れるようになる」→「何を鍛える? フォームは?」
つまり、マスタリー目標を持っていると、自分の能力を高めるための具体的な方法を考えられる状態になるわけです。

パフォーマンス目標

パフォーマンス目標は、「体育祭の短距離走で1位を獲って人気者に」「数学でクラス一番に」「マーケティングスキルを高めて出世する」などの目標を指します。

自分の能力に対してポジティブな評価を得ようとする、もしくはネガティブな評価を避けようとする目標です。
前者はパフォーマンス接近目標、後者はパフォーマンス回避目標といわれます。

パフォーマンス目標の根底にあるのは「自分(自分の能力)がどのように思われているか」ということなので、マスタリー目標と比べると、習熟したいに焦点が当たっていないタイプの目標になります。
したがって、能力の習熟に関してはマスタリー目標の方が合っている、といえるかもしれません。

マスタリー目標とパフォーマンス目標による「失敗」への考え方の違い

マスタリー目標とパフォーマンス目標の大きな違いとして挙げられるのが、「失敗」に対する認識の違いです。

マスタリー目標においては「失敗」は成長の糧として認識されます。

わたしは、今までに、一度も失敗をしたことがない。
電球が光らないという発見を、今まで二万回したのだ。
(エジソン)

エジソンは強烈なマスタリー目標を持っていた、超一流の学習者だと言えますね。
他にも「失敗」についてポジティブな発言を残している偉人は多く、彼らは皆マスタリー目標を持って生きていたのです。

対して、パフォーマンス目標では「失敗」は恥や恐れの源泉で、避けるべきものです。

そしてここで重要になるのが「パフォーマンス接近目標」「パフォーマンス回避目標」です。
パフォーマンス接近目標は自分の有能さをアピールする意味を持つ目標、パフォーマンス回避目標は自分の無能さを隠そうとする消極的な目標でしたね。

「失敗」に関わるのは後者のパフォーマンス回避目標の方です。

「失敗を避けるために頑張るんじゃないの?」

と思う人もいるかもしれません。

パフォーマンス回避目標においては違うのです。
パフォーマンス目標の根源にあるパフォーマンス志向の下では、失敗のダメージについて考えてしまいます(マスタリー志向では失敗によるダメージには注目しない)。

そして、失敗によるダメージは努力をすればするほど上がっていくのです。
費用対効果で考えるとわかりやすいでしょう。1万円投資して失敗するのと、10万円投資して失敗するのではダメージが全然違います。

つまり、どういうことでしょうか?

パフォーマンス回避目標の下では努力しなくなる、ということです。

マスタリー目標とパフォーマンス目標によるやる気と成果への影響

ここである実験結果から得られた、マスタリー目標とパフォーマンス目標が内発的動機づけ(やる気)や成果への影響プロセスについて見てみましょう。

ElliotとChurchが行った実験によると以下の図のような関係があるようです。

マスタリー目標とパフォーマンス目標の影響プロセス
(Elliot & Church(1997)より作成)

左に「目標を生成する要素」、中央に「目標の種類」、右に「目標に影響を受ける要素」が並んでいます。

まず左側にあるのは目標を生成する要素です。
「達成動機」と「期待(自分の能力に対する)」はマスタリー目標とパフォーマンス接近目標を生成する傾向にあり、「失敗への恐れ」は両パフォーマンス目標を生成する傾向があります。
さらに「期待」はパフォーマンス回避目標の生成に対してネガティブな影響を持ちます。

次に目標から影響を受ける2つの要素「内発的動機づけ」と「成果」についてです。

マスタリー目標は「内発的動機づけ」に対し、パフォーマンス接近目標は「成果」に対してポジティブな影響を持ちます。
一方のパフォーマンス回避目標は「内発的動機づけ」「成果」の両方に対してネガティブな影響を与えてしまっています。

まとめてみましょう。

⇒「内発的動機づけ」を強化したいのであればマスタリー目標を持った方が良く、そのためには「達成動機」「期待」が重要となる
⇒「成果」を強化したいのであればパフォーマンス接近目標を持った方が良く、そのためには「達成動機」「期待」が重要となる
⇒パフォーマンス回避目標は「内発的動機づけ」「成果」に悪い影響を与えるので、その生成要因となる「失敗への恐れ」のマネジメントが必要である。

どうでしょうか? マスタリー目標とパフォーマンス目標について理解できたでしょうか?
自分の経験を思い出しながら、具体的なイメージと結びつけて理解してみてください。

マスタリー目標をメインにしながら、パフォーマンス目標を活用しよう

学習者としておすすめなのはマスタリー目標です。
マスタリー目標には能力の習熟を助ける多くの効果が確認されており、一流の学習者であれば誰もが持っている目標の種類になります。

一方のパフォーマンス目標についてですが、必ずしも排斥されるべきものではありません
競争に勝ちたいのであれば、パフォーマンス接近目標はマスタリー目標よりも有用なのです。

例えばマスタリー目標の場合、失敗しても経験と考えてしまうのですが、パフォーマンス目標の場合、そうはなりません。
さっきまではこのことをマイナスに捉えていましたが、戦略・戦術的にみるのであれば、失敗とは損失であり、できればない方がいいですよね。

「Plan Aは失敗するかもしれないけど、経験になるからPlan Aでいこう」がマスタリー目標の考え方がとするなら、
「Plan Aは失敗するかもしれない。目標達成のためには、見方を変えてPlan Bの方が良いのでは?」となるのがパフォーマンス目標の考え方です。

ビジネスの現場ではパフォーマンス目標の方が有用なことも多いのです。

したがって私の提案は以下になります。

マスタリー目標をメインに持ちながら、随所でパフォーマンス目標を立てよう

マスタリー目標とパフォーマンス目標、その目標はどっち?

マスタリー目標とパフォーマンス目標について理解できたでしょうか?

今あなたが持っている目標を良く分析してみてください。
マスタリー目標だと思っていたけど実はパフォーマンス目標(もしくはその逆)みたいなこともあり得るかもしれません。

一流の学習者を目指して、目標の設定も上手くなっていきましょう。

 

今持っている目標をマスタリー目標とパフォーマンス目標に分けてみよう

(参考)
http://www-2.rotman.utoronto.ca/facbios/file/09%20-%20Locke%20&%20Latham%202002%20AP.pdf
http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.431.7950&rep=rep1&type=pdf

 

 

 

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