スコトーマとは? 学習者が知っておきたい「心理的盲点」のこと。

スコトーマとは? 学習者が知っておきたい「心理的盲点」のこと。

今回のLearnTernでは「スコトーマ(心理的盲点)」を学習の文脈から紹介したいと思います。
スコトーマを知ることで「学習の効率性UP」や「ダニング=クルーガー効果予防」に繋がるかもしれません。
ざっくりと学んでいきましょう。

(久しぶりの記事で力が入って、少し長くなりました。)

スコトーマ(心理的盲点)とは

「スコトーマ」はもともと眼科用語の一つで、“盲点”を意味します。
眼の構造上、どうしても見えなくなってしまうポイントのことですね。

この言葉が心理学の世界に転じて、「心理的盲点=スコトーマ」となりました。

その意味は「見えてはいるけど、見えていないポイント」。

私たちはいわゆる五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)を使って環境から情報をインプットしています。

しかしながら、感覚器官を通じて送られる情報量を全て合わせると膨大な量になってしまいます。
だから情報を選別し、取捨選択しているわけですね。

取捨選択をするときに使われているフィルターのことを「RAS」と呼んだりするのですが、今回はそこはあまり重要でないので割愛します。「スコトーマ RAS」とかで調べてみてください。

ここで重要なのは、私たちはフィルターによって情報を取捨選択するので、普段は情報として認識していない部分、すなわち「スコトーマ」があるということです。

なぜスコトーマについて学ぶことが大切なのか

スコトーマは自己啓発系でよく使われる言葉です。

情報の取捨選択フィルターは決して“悪者”ではなく、私たちの日常的な認知負荷を軽くするためにあるものです。
車を走らせているときに、歩行者のファッションを片っ端からチェックしていては事故まっしぐらでしょう(運転しないのでわからないけど)。

しかしながらそのフィルターは固定観念にもなりえます。「決めつけ」というヤツですね。

結果、成長が妨げられてしまうことがあります。

だから様々な方法を使って「スコトーマを外そう!」と主張する流れですね。

LearnTernでは「ダニング=クルーガー効果」も絡めて考えたいと思います。

スコトーマとダニング=クルーガー効果、またコンフォートゾーン

「ダニング=クルーガー効果」については別記事で解説したことがあります。学習済みの人はどんなものだったか説明してみてください(テスト効果)。

ざっくり言えば、「能力の低い人ほど、自分の能力を過大評価しがちである」という傾向のことです。
これも成長を妨げる要因の一つですね。

ダニング=クルーガー効果に陥っている人は、思いっきり「スコトーマ」の悪い部分にやられています。

自分のできていない部分、次のステップに進むのに必要な部分。
それらが「スコトーマ」になってしまっているばかりにダニング=クルーガーってしまうわけです。

スコトーマを知ることはダニングークルーガー効果への対策にもなります。

また「コンフォートゾーン」もスコトーマと一緒に語られることが多いです。

コンフォートゾーンというのはその名の通り「自分が安心できる領域」のこと。
自分ができること(成功確率を十分に上げたこと)だけをやっていれば、確かに安心できるでしょう。

――しかしそこに成長はありません。

基本的に一流の学習者はコンフォートゾーンにいる時間をできる限り減らさなければいけません。

スコトーマはコンフォートゾーンの外にあります。
スコトーマを知ることで、コンフォートゾーンの外の領域に目を向けることになるのです。

スコトーマの部分が学習の面白みという話

なかなかスコトーマの中身についての話をせず、メタ的なことばかり言っています。
まあスコトーマの中身についてはあまり書くこともないので、もう一つだけメタ的な話をさせてください。

「スコトーマの部分が学習の面白いところである」という話です。

正確に言えば「スコトーマだった部分」ですね。

私たち人間は同じものを見ていても、まったく異なる情報を受け取っています。
一つのランタンを見て、その光の強さや色を見ている人もいれば、デザインを見ている人もいます。「LearnTern」のことを思い返している人もいるかもしれません。

この現象はきわめて普遍的ですが、それが顕著な場合があります。

“熟達者”“素人”が同じものを見た場合です。

私はテニスをやっていたので、テニスを例に考えてみましょう。

ダブルスの試合を観戦しているとします。

素人はめちゃくちゃボールを眼で追っています。
まずここですが、ある程度テニスをやってきた人ならばボールばかりを見ていることはありえません。見るのはフォームです。選手の方を見ればボールがどうなるかなんて大体わかります。

次に、ダブルスであること。
ダブルスの名手が特にチェックするのは前衛の動き。これは前衛がボールに触れていないラリーにおいてもです。
前衛がどのように動いているのかを見れば、そのペアのレベルがある程度わかります。

このように、学習・熟達していくことによって見るポイントはどんどん変わっていきます。

学校の勉強で考えれば、現代文などは特に差が出てきます。
苦手な人は文章をダラダラとフラットに読んでいることが多いです。
一方、得意な人はこれまでの経験からどこに注意を払えばいいか理解しているので、メリハリをつけて文章を読んでいます。

認知的負荷もまったく変わってくるので、あからさまに点数に差が出るのです。

“熟達者”が見えている部分は“素人”にとっての「スコトーマ」
つまり学習とは「スコトーマを見えるようにしていくプロセス」と考えることもできます。

そう考えると、スコトーマがゲームで出てくる「宝箱」のように思えてきました。
私はダンジョンの「宝箱」は全部開けたい派です。

スコトーマをつくる2つの要因

ひたすら「スコトーマ」についてのメタ的な話をしてきました。
ここからは「スコトーマ」自体の話。

「なぜスコトーマが生まれるのか」「スコトーマ対策」を書いていきます。

まずスコトーマの発生要因として挙げられる二つ。

① 知識が足りていない
② 興味がない(重要度を感じていない)

スコトーマの要因① 知識が足りていない

知識が足りていないことでスコトーマが生まれてしまう。
これは先程の「熟達者と素人」の話を思い出せばわかりやすいでしょう。

感覚器官が捉えていても、あなたの知識体系ではその情報の必要性がわからない。だからその情報を見逃してしまう。

問題が解けなかったり、パフォーマンスが速くならなかったりなどの原因はスコトーマにあるかもしれません。

スコトーマの要因② 興味がない

さらにその情報に興味がなかったり、(自分にとって)重要だと思っていなかったりすると、私たちは容易にその情報を逃してしまいます。

情報取捨選択フィルターのところでも説明したとおり、全ての情報を処理するのは認知的に好ましくないからですね。

とはいっても、そのフィルターは完璧ではありません。

逃してはもったいない情報を逃しているかもしれません。
起業家や発明家の発想の元となっている情報は、僕らも日常で触れている情報だったりするのです。

スコトーマへの対策

スコトーマが生まれる代表的な二つの要因は覚えられましたか?

では対策を考えていきましょう。
要因について考えていけば対策はすぐに浮かびます。

スコトーマ対策① 師匠・教師・コーチをつける

二つの要因のどちらもに対処するスペシャルな方法。
それは師匠と呼べる存在を得ることです。

「発達の最近接領域」なる理論があります。詳細は以下の記事にて。

ざっくり言えば、「人の助けがあればできる」ことに取り組むのが一番成長できるよ、という話です。

師匠やコーチなどの支援者は、私たちのスコトーマを教えてくれたり、スコトーマを見えるように導いてくれたりします。

師匠の代替として、「良いテキスト」に出会うのもありです。検索したり、人に聞いたり(こっちの方がおすすめ)してみましょう。

スコトーマ対策② ビジュアル(図解)を活用する

とはいえ、師匠を得るというのは簡単なことではありません。
大丈夫、他にも対策はいっぱいあります。

二つ目の対策は、知識欠如への対抗方法。

基本的に、知識欠如への対抗は「学習」によって行われます。
が、支援者なしにスコトーマの悪影響を除外するのは難しいもの。
見えていないのだから仕方ありません。

そこで使うのが「ビジュアライゼーション」
視覚化ですね。

以前「コンセプトマップ」について書きました。

“知識の地図”的なものですね。

コンセプトマップを活用し、既存の知識を視覚化することで、自分に見えていないところが見えてきたりします。
(『HUNTER×HUNTER』の暗黒大陸とか、そんなイメージです。)

すでに視覚化されているものを探すのも手ですが、知識の整理にもなるので是非自分でつくってみてください。

アナログでもデジタルでも大丈夫ですが、まずはアナログでつくるのがおすすめです。
デジタルの場合、ツールの使い方が「ノイズ」になるので。

スコトーマ対策③ 知的好奇心をコントロールする

「興味がない」ことへの対策もあります。

以前「知的好奇心」についての記事を書きました。

LearnTernは「学習意欲はコントロールできる」というスタンスを取っています。
知的好奇心に関する話もその一つで、「ズレ」を上手くつくることで知的好奇心をコントロールできるのです。

――「興味ないッス」

私もよく言います。
全部に興味を持つのは難しいです。

でも、その言葉が自分の可能性を制限しているかもしれないと、頭の片隅に置いておくといいかもしれません。

スコトーマ対策④ チャレンジングな課題に自分を投げ出す

――良質な学習は「支援」と「課題」によって生まれます。

「支援」については対策①を。

もう一つの鍵は「課題」です。

「コンフォートゾーンにある課題(今の自分にできてしまう課題)」をやっている間、スコトーマが見えることはありません。

よりチャレンジングな課題がないか、探してみましょう。

またチャレンジングな課題というのは「フロー体験」に入る条件の一つでもあるので、毎日を充実させる手段にもなります。Goodです。

と、こんな感じで4つほど対策を挙げさせていただきました。
「要因→(知識体系)→対策」のプロセスを経れば、他にもいろいろと対策が浮かぶはずです。いろいろ取り組んでみてください。

スコトーマと学習者

スコトーマ。
それはまだ見えていない部分。

学習者にとっての「宝箱」。

その「宝箱」を開けるための「鍵」、手に入れてみましょう。

 

自分がコンフォートゾーンにいる分野について、スコトーマを探してみよう

*Akiのあとがきnoteはこちら→『【あとがき】復活後最初の記事は「スコトーマ」』

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