今回のLearnTernでは、学習力と問題解決力を高める「メタ認知」について書きます。
① メタ認知をトレーニングするメリット
② メタ認知の全体像
③ メタ認知的知識とメタ認知的活動についての解説
④ メタ認知のトレーニング方法
という順番で進む予定です。
進研ゼミでおなじみのベネッセも「メタ認知」が高校の成績上昇に関連しているとの研究結果を発表しています。
→『「メタ認知」が成績上昇に効果-自分の学習を客観視することが大切-』
メタ認知能力は、学習や仕事をレベルアップさせるために絶対に必要な能力です。
かなり長いので、休憩入れながらでも読んでいってください。
絶対、あなたの力になるはずです。
準備はいいですか?
では、メタ認知を学んでいきましょう!
メタ認知とは
まず「メタ認知」とは。
(一般的定義から入りますが、のちほどメタ認知をゲームで例えていきますのでご安心を)
一言で言うと「認知についての認知」です。が、これだけでは意味がイメージしきれないかもしれません。
たとえば、
-「自分の考え」の矛盾に気がつく
-「頭がこんがらがってきた」ので、一度紙に「書き出してみる」
- 読んでいる本が目的に合っていないと感じ、読むのをやめる/特定のポイントだけ読む
- 理解しやすい・記憶しやすい仕組みを把握し、実践する
など、これらはすべてメタ認知と言えます。
私たちは「対象」に対して「思考」します。「記憶」したり「理解」したり「判断」したりしています。
この思考や記憶、理解、判断などを専門的に呼ぶと「認知(活動)」です。
メタ認知は、これらの「認知」をより上位の(メタな)視点から捉えることを意味しています。
「対象に対して行われている認知活動」自体を対象とした認知活動
ゆえに「認知についての認知」、メタ認知なのです。
メタ認知をトレーニングするメリット
メタ認知は誰もが日常的に行っている活動です。
しかし、高度なメタ認知能力を持っている人、というと多くはありません。
メタ認知能力は日常の過ごし方や学習・問題解決の経験、トレーニングによって高めることができます。
とはいっても、メタ認知能力を高めることに何の意味があるのでしょうか?
ここを明確にしておかないとメタ認知トレーニングへのモチベーションが上がらないでしょう。
何かを育てるゲームをイメージしてください。
なんでもいいです。ドラクエ、ポケモン、FF、モンハン、たまごっち、シムシティ、どうぶつの森。
効率的に攻略、レベルアップを進めようと思ったらどうしますか?
まずは「対象」を理解するはずです。
そのキャラはどんなキャラなのか、現状どんな強さなのか。
次に「環境」や「一般的なこと」もしかしたら「敵」について考えるかもしれません。
経験値効率のいい場所は? スキルポイントの振り分け方は? 敵との相性は?
何にせよ、ゲーム内の育成対象がいかに育つかはゲーム外のプレイヤーに依存するでしょう。
今イメージしたことを頭の右上あたりに置いておいて、認知活動の話をします。
先ほど行ったとおり、認知活動は思考や記憶、理解、判断などの総称です。
俗に言う「頭のいい人」「仕事ができる人」「デキる奴」はこれらの認知能力に優れていることが多いです。
おそらくここまで読んでいる読者のほとんどがこの認知能力を高めたいと思っているはず。
そこで、「自分の認知能力」を育てるゲームです。
頭の右上に置いていたイメージをまた目の前に持ってきてください。
「育てたいキャラ」は「自分の認知能力」です。
この時、ゲームの外でゲームをプレイしているあなた。
それが「メタ認知」です。
「自分の認知能力」がいかに育つかは、「メタ認知」に依存するのです。
メタ認知能力をトレーニングすることは、認知能力の育成効率を上げることにつながります。
「メタ認知の重要性イメージできた! はやく全体像とトレーニング方法知りたい!」
という人はスクロールして(!)、「メタ認知の全体像」に進んでください。
まだイメージしきれていない人は、もう少しお付き合いください。
「認知活動」からもう少し抽象度を下げて、「学習」と「問題解決」にメタ認知が与える具体的なメリットを考えていきましょう。
メタ認知が学習に与えるメリット
まずは「学習」。知識を得たり、再構造化したりするプロセスです。
LearnTernのメインテーマですね。
- あなたはどのように学習していますか?
- 本から知識を得ようとする時、どのような戦術を使っていますか?
- 既存知識が学習に与える影響を感じていますか?
- アウトプットはどのように行っているでしょうか?
- 記憶しやすくする方法は使っていますか?
多くの日本人は小学校から中学、高校まで12年、学生としての日々を送ります。さらに大学や専門学校で学ぶ人もいるでしょう。会社に入ってからも、もしくは個人で仕事をやっていく中でもたくさんの学習機会を得ることになります。
しかし、「学習のやりかた」自体を学んでいる人は少ないのです。
メタ認知は「学習」も対象にします。
(むしろメタ認知界隈では、一番研究が進んでいる領域かもしれません。一方で研究がいまいち実践に活かされていない感もあります)
メタ認知の知識を仕入れ、能力を高めていけば、上の質問の意味がわかり、答えられるようになるでしょう。
その時、あなたの学習効率は遥かに上がっているはずです。
1時間で学べる量が増えたり、先生の言っていることが理解しやすくなったり、記憶力が上がったりなど。
(ちょっと怪しいセミナーっぽくなってきました。)
もし自分の「学習者レベル」を上げたいのなら、「メタ認知」能力は必須です。
自分の「学習」の現状を把握するのも、その「学習」に変化を加えるのもメタ認知なのですから。
メタ認知が問題解決に与えるメリット
もう一つの重要な認知活動が「問題解決」です。
「数学の問題を解く」が一番イメージしやすいですが、私達は同じようなことを日常的に行っています。
- どうすれば駅まで最短で行けるか。
- この仕事を今日中に終わらせるには。
- 営業成績を伸ばすには。
- 妻の機嫌を直すには。
日々起こる、さまざまな「問題」に対してその「解決」を図るプロセスが「問題解決」です。
「学習」と並んで、二大認知活動と言えるでしょう。
メタ認知は問題解決力を高めます。
基本的なメカニズムは「学習」と同じですが、これを実感するには聞いてみるのが一番です。
問題解決力高いな、と思う人に、どのように問題解決に至ったか質問してみてください。
彼らは自分の思考を状況に合わせて適切にコントロールしています。
議論や交渉が上手い人なんかも高いメタ認知能力保持者です。
彼らは当然認知能力も高い。
でもそれだけではなく、認知をコントロールする「メタ認知」にも優れているのです。
メタ認知の全体像
ここから本格的にメタ認知のお勉強をします。やっとです。
「ちょっと疲れた」という人はこの記事へのリンクを保存するかツイート(特典:私が喜びます)するかして、少し休憩しましょう。
ここからは用語もガンガン出てきて、理屈っぽい話になります。と言いつつも理論的な話はあまりしないので逃げないでください。学問的な興味がないと眠くなってしまうと思うので、今回はもっとシンプルな話しかしません。
休憩は終わりましたか? ではメタ認知の話を続けます。
まず「メタ認知の全体像」を把握しておきましょう。
まだ頭の右上に「ゲーム」のイメージがある人は消しといてください(これもメタ認知)。
ちなみに、メタ認知については学問の世界でもけっこう混雑していて、「これが正解」という体系はありません。
今回紹介するのは三宮真知子が著書『メタ認知 学習力を支える高次認知機能』の中で紹介している体系となります。おそらくこれが一番わかりやすいです。
メタ認知的知識とメタ認知的活動
メタ認知は「メタ認知的知識」と「メタ認知的活動」の2つから構成されています。
「メタ認知的知識」はメタ認知の静的な部分です。
認知活動に関する知識などを指します。ゲームの例で言えば(「え、消せって言われんかったっけ?」)、キャラの性質やダンジョン・敵の情報など、プレイヤーの頭の中にある攻略情報にあたります。
「メタ認知的活動」はメタ認知の動的な部分を担当しています。
ゲームの例で言えば、プレイヤーがゲーム画面から情報を得て、操作するプロセスにあたります。
情報を得るのが「モニタリング」、操作するのが「コントロール」です。
メタ認知はこれら静と動の部分が相互に関係しあって、進んでいくものです。
したがってトレーニングもこれら2つに対するアプローチをとっていけばいいということになります(あとで紹介)。
オンライン・メタ認知とオフライン・メタ認知
メタ認知の基本は上の通りなのですが、もう1つ加えておきたい「軸」があります。
「時間軸」です。
活動を「行う前(事前段階)」「行っているとき(遂行段階)」「行った後(事後段階)」の3つにメタ認知的活動を分けることができます。
このうち遂行段階のメタ認知が「オンライン・メタ認知」、事前・事後段階が「オフライン・メタ認知」です。
メタ認知と言われて思い浮かぶのはオンライン・メタ認知ではないでしょうか。
でも活動をやる前や後にもメタ認知は働いているのです。
詳しくはあとで解説します。
メタ認知の全体像は把握できたでしょうか?
では頭の右上にこのイメージを置きながら、「自分はいま何の勉強をしているのか」確認しながら読み進めていってくださいね。
メタ認知的知識とは
まずは「メタ認知的知識」、認知活動に関する知識です。
メタ認知の静的な部分を担当しています。
「知識」なので、すぐに対策できる部分と言えますね。
メタ認知的知識は3種類に大別されます。
「人」「課題」「方略」の3つです(Flavellによる)。
順番に解説していきましょう。
「人」に関するメタ認知的知識
「人間の認知特性についての知識」です。
人間がどのように思考したり知覚したり判断したり記憶したりするのかについての知識になります。
「人」についてのメタ認知的知識はさらに3つに分類できます。
① 一般的な認知特性についての知識
まずは人間が一般的にどのように認知活動を行っているか、その特性についての知識です。
認知心理学などの分野で研究されていることが主になります。
どのようにすれば記憶しやすいのか、目標が動機づけやパフォーマンスに与える影響とは。
またメタ認知に関する知識もここに含まれるといえるでしょう。
② 自分自身の認知特性についての知識
次は自分(あなた)自身についての知識です。
ゲームで言うと「プレイヤーキャラクター」についての知識ですね。
自分はどういう認知活動が得意で、どのような領域で優れていて、どんな状態の時に強いのか。
「言語的表現は得意だが、視覚的表現が苦手」「慌てると覚えていたことを忘れてしまう」
「カフェだと集中しやすい」「完璧主義に陥りやすい」
メタ認知では「自分を知る」ことが何よりも重要です。リアルタイムの(動的な)モニタリングだけでなく、静的な知識も自分を知る助けになります。
日記などを続けて、分析してみるのも良いかもしれません。
③ 個人間の認知特性の比較による傾向・特性についての知識
最後は人の比較による知識です。
「エリーとジェニファーだと、エリーの方が記憶力に優れている。一方、クリエイティブな発想はジェニファーだ」
このように、比較によって認知的な傾向・特性を掴んでいくことでメタ認知的能力の向上が望めます。他者を見る時、メタ認知的視点を持ってみると良いでしょう。コーチや教師になる人にとっては極めて有効です。
「課題」に関するメタ認知的知識
取り組む「課題」についての知識もメタ認知に関わってきます。
ゲームで言うと、「敵」や「環境」に関する知識ですね。
「無意味な文字や数字の羅列は、有意味のものに比べて覚えにくい」
「単純な繰り返しのタスクは長時間続けるとミスしやすい」
「彼を知り、己を知れば百戦殆うからず」とは中国の軍事思想家、孫武の言です。
メタ認知は「己を知れば」の部分だけでなく「彼(敵・課題)を知り」の部分も担当しているのです。
「方略」に関するメタ認知的知識
課題を攻略する「方略」についての知識です。
ゲームで言うと「武器」や「魔法」「スキル」についての知識になります。
有効な計算法や記憶術、理解を容易にする勉強法や数学の公式、ヒューリスティクスなどが当てはまります。
学習科学などが力を入れている部分です。
知識的なものに加え、スキル的なものもあります。
どんな時にその方略が有効なのか、という条件的知識も含まれます。
この知識やスキルを増やすのが「学習」の主な役割です。
メタ認知的活動とは
メタ認知的知識と双璧をなすのが「メタ認知的活動」、認知活動を監視し、コントロールするThe・メタ認知な部分です。
いくら豊富なメタ認知的知識を持っていても、実際に運用できなければ意味がありません。
この「運用」を上手く行うのがメタ認知的活動です。
自分の認知活動を見る「モニタリング」と認知活動を制御する「コントロール」があります。
① 「モニタリング」によって、情報を得る
② 「メタ認知的知識」と照らし合わせる
③ 「コントロール」によって認知活動を最適なものへと変化させる
というのが【メタ認知の基本的な流れ】です。
では「モニタリング」と「コントロール」について詳しく見ていきましょう。
メタ認知的モニタリングとは
メタ認知的モニタリングとは、メタレベルが対象レベルの認知活動から情報を得ることです。
ゲームで例えると、プレイヤーがゲーム画面から情報を得るプロセスになります。
「自分いま、あんまり集中できていないな……」
「今この本を読んでいる目的は……」
「理解度が悪いな、何か活用できる対策はないかな?」
先ほど提示した【メタ認知の基本的な流れ】にあるように、モニタリングはメタ認知のスターターです。モニタリングによって情報を取得できなければ、次に何をすればいいのかわかりません。
普段の自分の思考を振り返って、自分のモニタリングレベルがどの程度か評価してみてください。
(この行為もメタ認知的モニタリングといえます)
メタ認知的コントロールとは
メタ認知的コントロールとは、メタレベルが対象レベルの認知活動を制御・修正することです。
ゲームで例えると、ゲーム外のプレイヤーがゲームキャラに対して操作を行うプロセスになります。
「目的を認識できていないから、一度目的を振り返ろう」
「他者に教えるのを前提にすれば習熟度が上がるはず、妹に教えるつもりで勉強しよう」
「一度紙に書き出してみよう」
モニタリングで受けた情報をメタ認知的知識と照合し、最適な認知活動に近づけていきます。
「メタ認知的知識」とメタ認知的活動の「モニタリング」と「コントロール」。
まずはこの3つの意味と、【基本的な流れ】をしっかり理解してください。
理解した人は、なぜメタ認知能力の高い人が優秀なパフォーマンスを発揮できるのか、わかったはずです。
自分の認知活動を常に最適な状態へと変化させられるから、です。
メタ認知に優れている人は「装備」や「スキル」を状況に応じて切り替えます。
対して、メタ認知弱者は、どんな状況・どんな敵でも「ゾンビキラー」と「火炎系魔法」で戦おうとしている感じです。
ドラゴン相手なら「ドラゴンキラー」の方がいいと思います。
メタ認知の重要性をメカニズムの面からも理解しておきましょう。
時間軸で見るメタ認知的活動
メタ認知のトレーニング方法に移る前に、オンライン・メタ認知とオフライン・メタ認知の話もしておきます。
メタ認知的活動は、その時間軸でさらに分類されるという話です。
例えば「重要顧客との交渉」があるとしましょう。
実際に交渉を行っている最中に自分の認知活動をモニタリングし、コントロールするのがオンライン・メタ認知です。
メタ認知といって一番イメージするのはこのパターンでしょう。
メタ認知は交渉前(事前)と交渉後(事後)にも行われます。
まず交渉前には、交渉相手がどのような相手で交渉内容はどのようになるか、自分のレベルで達成できる可能性はどの程度か、などの情報をモニタリングします。
つづいて、それらの情報と既存知識を組み合わせて、目標の設定や戦略・戦術の策定を行っていくでしょう。これがコントロールです。
交渉後は何をするでしょうか?
交渉がどうであったか、上手く行った原因は? もしくは失敗の原因は? というように認知活動を評価、モニタリングしていきます。
そこから次の目標を設定したり、次に活かせる内容をまとめたりします。
これらがオフライン・メタ認知です。
このように整理してみると、オフライン・メタ認知が重要に思えてきませんか?
PDCAやOODAのようなサイクルと同じですよね。成長の鍵を握るのはこのオフライン・メタ認知といえます。
さらに言えば、オンライン・メタ認知よりオフライン・メタ認知の方がカンタンです。
オンライン・メタ認知は、実際の認知活動を並行で行わなければ行けないのに対し、オフライン・メタ認知はメタ認知に集中できます。プレゼンなどであれば、ビデオに撮っておくのも有効です。
以上、ここまでで「メタ認知に関する基本的なこと」を学び終えました。
一度紙にマップを描いてみると、理解度をモニタリングできますよ。おすすめです。
メタ認知能力のトレーニング方法
ではとうとうメタ認知能力のトレーニング方法に入ります。
まずは前半で「メタ認知トレーニングの基本的なアプローチ」について紹介し、後半で「簡単に始められるメタ認知トレーニング」を紹介していく感じです。
メタ認知トレーニングのアプローチは大きく2つの方向に分けられます。
■「メタ認知的知識」に対するアプローチ
■「メタ認知的活動」に対するアプローチ
メタ認知はこの2方向で鍛えていくことができるのです。
メタ認知的知識へのアプローチ
メタ認知的知識について、覚えていますか?
覚えていなければ、一度上にスクロールして確認してみてください。
OKですか?
ではいきます。
メタ認知的知識へのアプローチは「トレーニング」と言うよりは「お勉強」かもしれません。
アプローチの基本は「メタ認知的知識を増やす」ことだからです。
どれだけメタ認知的活動が上手く進もうが、基となる知識がなければパフォーマンスは上がりません。
- どのようにすれば記憶しやすくなるのか、集中力が上がるのか。
- 自分は何が得意で何が苦手なのか。
例えば数学の問題解決。
「図に描いてみることで解決しやすくなる」という方略があります。
が、この方略をそもそも知らなければ、状況をモニタリングしても、その方略をフィードバックできるはずもありません。
私達はわからないことをGoogleで検索して、すぐに発見できます。ですが、まだGoogleに上がっていないような情報を検索によって見つけることはできないのです。
同じように、まだ持っていない知識をメタ認知的活動で使うことはできません。
ちなみにこの「まだ方略自体を知らない段階」を専門的に「媒介欠如」といいます。
そして「媒介欠如」の先にはあと2つ「産出欠如」「利用欠如」という壁があります。
知識を持っていても、どのような条件の時に使えるのか理解していないせいで使えない。
数学でその解放パターンを知っていたのに、まさかその問題で使うとは思わなかった、みたいな経験ありませんか?
これが「産出欠如」です。
また、記憶力を上げる方法を勉強したのに、全然実践できていない。
これも「産出欠如」です。
メタ認知的知識を増やすためにはこの産出欠如に注意する必要があります。いくら学んでも使えなければメタ認知的な意味は皆無です。
産出欠如に対策する方法は2つ。
① いつその知識が使えるのか「条件的知識」を手に入れる
② その知識・方略の価値(有効性/コスト)を明確に認識する
これらの対策や「利用欠如」について、詳しくは下の記事を参考にお願いします。
メタ認知トレーニングの1方向目「メタ認知的知識へのアプローチ」は、
認知活動についての知識、課題や方略についての知識、自分についての知識を増やすこと
です。
メタ認知的活動へのアプローチ
もう1つのアプローチは「メタ認知的活動」へのアプローチです。
モニタリングとコントロールですね。
さっきのアプローチは「お勉強」でしたが、こちらは「トレーニング」に近くなります。
普段、私達は認知活動を行っているわけですよね。
メタ認知はその認知活動をもう1つやるようなものです。
当然、今までメタ認知をあまり行えていなかった人は大変です。
脳のリソースをこれまで以上に消費します。
だから、トレーニングが必要なのです。
とはいってもいきなり高負荷のトレーニングをするのはダメですよね。
そこで、オンライン・メタ認知とオフライン・メタ認知を思い出してください。
オフライン・メタ認知はオンライン・メタ認知よりも負荷が軽いです。
言ってみれば「計画」と「反省」なわけですから。
そしてオンライン・メタ認知はオフライン・メタ認知でやっていたことを認知活動を実際にしながらリアルタイムで回していくイメージです。
ここでトレーニング法の提案。
まずはオフライン・メタ認知をトレーニングしましょう。
理由は2つ。
オフライン・メタ認知の方が低負荷であることと、オンライン・メタ認知でもオフライン・メタ認知でやることをリアルタイムでやるだけであること、です。
やり方はカンタン。
というより、多くの人は体験したことがあると思います。
事前でも事後でも、まずは情報を集めます(モニタリングする)。現状はどうなのか。
そして既存の知識と突き合わせます。
その後、現状を改善するためのアイデアを出し、戦略を決めます(コントロールする)。
【メタ認知の基本的な流れ】を想起した人は、いい感じです。
もう1回書いておきましょう。
① 「モニタリング」によって、情報を得る
② 「メタ認知的知識」と照らし合わせる
③ 「コントロール」によって認知活動を最適なものへと変化させる
まとめです。
メタ認知トレーニングの2方向目「メタ認知的活動へのアプローチ」は、
オフライン・メタ認知にて【メタ認知の基本的な流れ】を実行し、慣れたらオンライン・メタ認知でも同様のことを行う
です。
簡単に始められるメタ認知トレーニング
2方向のメタ認知トレーニングについては理解いただけたでしょうか?
基本はこの考え方を応用して、勝手にやってくれればいいのです。
でも、最初は「やることわかんないー」という人もいるでしょう。
そこで、いくつか具体的かつ簡単に始められるメタ認知トレーニングをまとめてみました。
どれもカンタンですが、有効なトレーニングです。
まずはここからはじめてみましょう。
①「3つの問い」を繰り返す
②「予告書」と「日記」
③「紙と鉛筆」を使う
④「知識」を増やす
⑤「ワーキングメモリ」を鍛える
①「3つの問い」を繰り返す
「3つの問い」とは以下のものです。
① いま、何をしているのか?
② 何故それをしているのか?
③ それは何の役に立つのか?
これは認知活動のモニタリングを促進させる質問です。
無意識にやっていることを強制的に意識に上らせる手法となっているので、手軽にメタ認知的モニタリングが体感できます。
事あるごとにこの「3つの問い」を自分に向けてみましょう。
スマホのリマインダーに設定しておくのも面白いかもしれません(しんどくなってきますが……)。
②「予告書」と「日記」を書く
「日記」はわかりますよね。
1日の終わりに今日を振り返って記すものです。
これはオフライン・メタ認知のうち、事後段階に該当します。
このとき、行動を書くだけでなく、「何を考えたのか」も書いておくとメタ認知的ですね。
「予告書」は日記の予告Verみたいな感じです。
オフライン・メタ認知のうち、事前段階担当ですね。
今日、何をするのかを文章で書いていきます。予定表ではなく、予告書なので、なるべく具体的に書いていきます。日記と同様、「何を考えるのか」も書いておくと良いかもしれません。
私は日記の習慣がつかなかったので、朝起きたら予告書を書いてます。
③「紙と鉛筆」を使う
メタ認知では「外化」することが大切です。一度自分の外に出してみることですね。
別にツールは何でも良いのですが、最もメタ認知に良いのは「紙と鉛筆」です(科学的根拠なし)。
紙と鉛筆の方が、自分が考えていることを、一番そのまま表現できると思っています。
ので、メタ認知を刺激したいときには紙と鉛筆を使うのがオススメです。
④ 知識を増やす(『メタ認知で<学ぶ力>を高める』)
メタ認知的知識へのアプローチから1つ。
知識を増やすためにいい本を1冊紹介しておきましょう。
この本は、メタ認知系の研究で有名な三宮真知子氏が執筆された本で、実用的かつカンタンなアプローチをいろいろまとめてくれています。
内容は比較的浅めですが、初心者で幅広く知識を得たいという方にはオススメです。
(追記:2020年3月3日)
最近出たおすすめの本も追記しておきます。
『「深い学び」の科学: 精緻化・メタ認知・主体的な学び』です。
『メタ認知で<学ぶ力>を高める』と比べると少し専門的で難しいですが、学習を深める科学的手法を体系的にまとめてくれています。教育者目線が強めです。
⑤ ワーキングメモリを鍛える
(追記:2019年6月12日)
オフラインはともかく、オンライン・メタ認知はリソースを膨大に消費します。
では、リソースを増やしてみましょうか。
そのための方法が「ワーキングメモリを鍛える」こと。
ワーキングメモリについては詳しくは以下の記事で説明しています。よく「作業机」というメタファーが使われるので、それをイメージしてください。机は広いほうが良いですよね。
メタ認知能力を万全で使うためにはワーキングメモリを鍛えることが不可欠だと、僕は思います。
「じゃあどうやってワーキングメモリを鍛えたらいいの?」
はい、幸運にも僕らの前には解決法(無料)があります。
メンタリストのDaiGoさんらがつくった「DNB」というアプリで鍛えることができます。専門的にはNバック課題と呼ばれるものがスマホで手軽にできるのです。
メタ認知を鍛えて、一流の学習者に
メタ認知の基本についてお伝えしてきました。
普段のLearnTern記事ではここでポイントを箇条書きしたりするのですが、今回はしません。
ぜひ自分でスマホにでも紙にでもポイントをメモしてください。
メタ認知は頭の中の活動だけでなく、外化するのも重要なのです。
メタ認知については多くの研究結果が上がっています。
教育者の方であれば、知っているかもしれませんが、メタ認知を促進する教授方法の事例などもたくさんあります。
ちょっと堅めの書籍やレポート、論文になってしまいますが、興味が湧いたら読んでみるといいでしょう。
この記事についても今後継続的にブラッシュアップしていく予定です。
もし周りに「メタ認知をすすめたい」人がいればガンガン共有してもらえると嬉しいです。
(特典:私が喜びます)
では、今回はこのあたりで。
-良いメタ認知ライフを-
「3つの問い」を見える所にセットして、仕事・学習に取り組んで見る